第24章 繋がること
蝶に発動してしまった異能を止めるための条件は不明なままなんとか一日が経ち、首領から連絡が入った。
何やら異能を持っていた構成員に太宰を触れさせたらしいのだが、それでも昨日は蝶に何の変化も起こっていなかった。
つまり、異能の効果を消すためには蝶に太宰を触れさせるか、蝶に自力で能力を使って解除させるか…はたまた別の方法か。
太宰の野郎に頼むだなんてことは勿論却下なわけなのだが…
「…いつもならあんなに学校行くからって逃げんのに」
『………蝶、中也さんとこいたいもん』
なんだこいつ、天使か。
いや、そんなことまで言い始めたらお前…俺はいいと思うぞ?
一日くらいそんな日があって、そんな理由で休んでも。
日頃常人の何倍も仕事をこなしてるわけだし、休みなんかお互いまともに無いわけだし。
というか、寧ろこんな風に言われて断れるわけがない。
人間として…また育て親として、教育的には甘やかしすぎているのかもしれないが……こいつの幼少期や育ち方を考えると、どうも甘やかしすぎているようにも思えない。
蝶は、今まで誰かにこんな甘え方をしたことはあるのか…?
自分の口から、離れたくないだなんて…“いい子”でいることに義務を感じず過ごせる時だなんて、あったのか?
「いつも…そう思ってんの?」
遠慮がちに聞くと、少し間を空けてから小さくコクリと頷く少女。
俺の腰に腕を回してぴったりとくっつき、そんな可愛らしいことをしてくれる。
「じゃあ、いつも我慢して行ってたのか?…その上探偵社にも顔を出して、事務仕事もこなして、任務なんかもして?」
『…しなきゃいけないから』
別に、そんなに背負い込まなくてもいいんじゃねえの。
ぽろ、と口からこぼれる言葉。
それにピク、と反応して、目を丸くして少女はこちらに目を向ける。
『な、んで…』
「…お前、今たったの十五じゃねえか…俺や他の奴らに恩を感じてるのも、お前が仕事をする能力に長けてるのも分かってる。けど、お前は永らく生きすぎたせいで…自分の欲をそれより優先することを学べてない」
『欲……?』
ようやく甘えたことを口にしてくれるようになった。
…少し利用させてもらおうじゃあないか。
「蝶…」
無責任なんて誰かに思われたって、かまうものか。
____お前、試しに暫く、やりたい事だけやって生活してみろ