第24章 繋がること
「…本当に、申し訳ないことをした。知らなかったとはいえ…それでも」
『…いえ、そもそも私が原因でそうなる羽目になってしまったんです。寧ろ私の方が、ごめんなさい』
「あなたは悪くない、何も…利用されてしまっただけだ。…この世界にだって、来たくてきたわけじゃなかったのでしょう?」
『………はい』
さすがは元死神。
何度か顔を合わせたり仕事をしたりしたことのある程度の仲だったが、まさかこんなところで再会することになるだなんて。
今日は学校で、二学期の終業式。
式が終わってから、私の方からではなく先生の方から、話をしたいと持ちかけられた。
「……お久しぶり、という言い方はおかしいですかね。…私と同じような目をして仕事をしていたあなたが、今笑えるようになっていてくれて本当によかった」
『…それは、零に言ってるんですか?…それとも、澪に?』
「蝶さんを含めた、全員にです」
『そう…ですか』
そう言われるのが、一番嬉しい。
中原中也からもらった名前…彼のおかげで生まれてこれた存在。
殺せんせー…死神さんにそれを認めてもらえたのが、嬉しかった。
何よりも彼は、当時の私を知っている人間だったから。
言葉の重みが、違う。
「して、柳沢の事ですが…彼は私に相当な恨みがあるはずですから、きっとまた先生に何か仕掛けてくることでしょう」
『…私には……分かりません、あいつが何を考えてるのか』
「白石さんには、恨みというよりはまだ探究心が残っているのかもしれませんね。何度かあなたに何かをしようとしていましたし……私もやはり、中原さんの意見に同意です。できるだけ一人にはならない方がいい」
もう、いい加減に私も学んだ。
あいつが私に興味をまだもっているのなら、一人にはならない方が身のためだって。
『……四年半前も、それでまた捕まったから』
「!…白石さん、あなたは自分のせいで私が苦しんでいたと思ってますね?」
『まあ…そりゃあ…』
「…先生、今が人生で一番楽しいんです。こんな風に、誰かと関われることもありませんでした」
触手の力を手に入れて、愛しい人を失って。
そこで初めて分かった、人を見るということ。
「ありがとうございます…今の私は、あなたのおかげでいるのです」
また、誰かのようにそう言うんだ。
ありがとう、なんて。
少し、気持ちが晴れた気がした。