第23章 知らなかったこと
「お願いだ中也君…いや、お願いします中也君、娘さんを暫く僕に下さい!!!」
「どんな頼み方してるんですか首領…いや、ですが今回のこれはちょっと…」
先程から、まだあまり地位を会得していない中也さんに対し、組織の首領が頭を下げるという妙な図ができあがっている。
いい加減にやめてくれないため、遂には中也さんが首領が頭を下げるのを止めなくなる始末。
というのも、こうなったのは単純な話。
異能力組織間の抗争地帯を制圧するために、私が遠方へ派遣されるかもしれないという話が持ち上がったためだ。
「太宰君には別の用があるし、紅葉君にはいてもらわなきゃだし中原君にもお仕事頼みたいし…」
「じゃあその仕事全部片付けてから俺が行きます」
「三ヶ月分だよ!?三ヶ月分!!!」
『…私が向かって三ヶ月もかかるんです?』
「!…ああ、まあ色々とややこしくてね…何せ相手も異能力組織だから。本当は今広津さんと他の何人かの子に任せてあるんだけど、そこにこちらに戻ってきて欲しくてね」
ポートマフィアも、人手が十分に足りている状況ではない…それは私もよく分かっている。
なにより、先代の首領の遺した他への悪影響が大きい。
無駄に敵が多いのだ。
『成程、それで異能力を持ってる人達がこちら側に欲しい、と』
「その代わりに蝶をってことですか首領?能力者一人になるんですよ?」
「い、いやあ…蝶ちゃんならいけるかなって…」
「俺の蝶に怪我でもあったらどうす『いいですよ』あああ!!!?」
ぱああっと表情を輝かせる首領に、動揺しすぎる中也さん。
『だって、私が向かって三ヶ月って首領が言うんですもん…要するに、他に任せていたら先が見えないって言ってるんでしょう?』
「…見破られてた?」
『まあ…だって、首領が私に任務を依頼する時なんてそういうときくらいなんですもん』
「……じゃ、じゃあ…俺がとっとと仕事終わらせて駆けつけてもいいんじゃ…」
『寝る時は帰ってきますから落ち着いて下さい。私の能力があればできますから』
思い出したというように少しだけ安心したような中也さん。
しかし、それでも不安が拭えないのか、快諾してはもらえなさそう。
「…俺が仕事終わらせたら問答無用で行く。後、お前怪我か何かあれば絶対正直に言うこと。いいな?それとちゃんといつでも携帯を持っておくこと」
