第23章 知らなかったこと

先にそっちの確認もしろよ、と言う中也さんに対して織田作が放った一言。

｢お前がしてやればいいじゃないか｣

｢…｣

『へ…、あ……お、ださく？…私、ほら、何ともない…治ってるか…っ…ら、ぁ…ｯ』

織田作と交代するように目の前にやってきたその人。
初めて出逢った時のように…今度は彼の方から、指を絡めて手を握られる。

それに思わずビクついて、上手く身体が機能しない。

どうしよう…どうしたらいい？
またそれの繰り返し。

目を見るのも表情を確認するのも怖くて、顔を上げられずに軽くパニックになる。

｢……白石、何ともないんだろう？それなら握り返してやればいい…指、動かないなら中原も心配して仕方ないぞ｣

『？…し、んぱ…』

思わず織田作の声に反応してあげた頭で、視界に捉えてしまって目を見開いた。

『ちゅ、うやさ…泣いて……？』

｢…悪い、かよ……お前？舐めてんのか…ｯ、？こっちが、どれだけ…悔しかったか……お前がいなくなっちまうかもしれねえって、それだけでも…なのに起きたらヘラヘラして、前みたいに笑ってやがって…｣

『……痛くなかったの…怖くなかったの。…中也、さんが…いなくなっちゃうのより、ぜんぜん怖くなかったの』

｢！！…そう言ってくれよ、ちゃんと…っ、…指は…？動くか…｣

『……手…触れてて、いいんですか』

｢…勿論｣

お話しても…？
＿＿＿当たり前だ

関わって、いいの…？
＿＿＿あんな言葉そのまま捉えるな

……一緒にいて、いいの？
＿＿＿お前がしたいって言ってくれて、なんで止めなきゃならねえんだよ

『………中也さ、んは…ち、よ…の事……いらなく、ない…？…我慢してない、の…？悪い子じゃないの…いらない子じゃ、ないの…？嫌い、なんじゃ…ないの…っ、？』

｢…誰がいらないとか言ったんだ…よく考え直せ。…俺は、俺のために自分のこと何も考えずに無茶しちまうお前のことは確かに…“好きじゃねえ”｣

少し柔らかくなった彼の口調。
それに少し驚いていれば、すぐに思ってもみない言葉に見舞われる。

｢ただ、それ以上に…お前が危ない目に遭うのが嫌なんだ、だからああいう言い方をしちまって……ｯ、俺は…お前の…蝶、のこと…｣

『…き、らいじゃ…ない…？』

｢勿論…だってな？…分かんねえ、か…そうだよな、言ってやれてねえもんな…｣

愛してるってこと