第22章 云いたかったこと
「なんでそれで俺のところに来んだよお前は…能力つかって中也さんとこに行きゃあいいじゃねえか」
『ち、中也さんがお仕事中だといけないからよ』
「ビビってんのバレバレなんですが…」
立原の後ろに隠れながら、中也の執務室へと歩いていく。
立原はほぼ無理矢理私に歩かされているような状態なのだけれど、それでもまあ着いてきてはくれるようだ。
「っと、そろそろ着くんだから俺の背中に隠れてな「んだと!!!?手前それなら俺をそっちに呼べよ先に!?じゃねえとあいつ怖がって来にく…って立原!!」え!?中也さんなんでいきなり飛び出してきてんすか!?」
勢いよく飛び出してきたその人。
それに思わず身を固くする。
「いや、なんでもなにも蝶がこっち来てるはずだって青鯖…から……」
ゆっくり、ゆっくりと中也がこちらに歩いてくる。
そのまま立原の横に来るとしゃがんで、私よりも少し低いところから顔を覗き込んできた。
「…蝶?…どうしたよ、そんな顔して…お前が来るってだけ先にきいてたから、紅茶淹れて待ってたんだ」
『…え…っ、?』
柔らかく微笑むその表情は、怒ってはいなかった。
もしかして、太宰さんからあんまり何も聞いてない…?
「入れ入れ、んなとこ隠れてねえで…立原も一緒の方が良いのか?」
『……ど、っちでも』
「…ありがとな立原、蝶のこと送ってきてもらって…今度酒でも飲みに行こうぜ」
「あんた大丈夫なのかよ酒飲ん「何か言ったか?」い、いえなんでも!!!」
これだけのために付き合わせてしまった立原に少し罪悪感が募りつつ、結局は中也の執務室に一人でお邪魔した。
本当に淹れたばかりなのであろう紅茶のいいにおいが漂っていて、少しだけ落ち着いた。
「……そんな思いつめんなよ、太宰の奴から全部聞いてるから」
『!…え……全部聞いて、って…嫌じゃなかったの…?』
「そりゃあ嫌だったけどな?お前が無理せずに逃げてくれたことの方が嬉しかったんだ」
逃げた…学校から………友達から。
以前の私なら、逃げる前に何かしでかしていたかもしれない。
パニックになって、暴走していたっておかしくない…そこから自分で、“自分のために”逃げてきた。
『……私、いつも逃げてるのに』
「そんなもんだよ、お前は年頃の女なんだから」
『…子供扱いしてる?』
「子供らしくなってっからな」