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第21章 親と子


『…中也さん』

「何だ?」

『手…繋がないんですか…?』

「!…繋ぎ、ます」

ぎこちない動きで触れられる手。
そのくせ指を絡めて恋人繋ぎなんてするものだから、思わずこっちまでドキッとした。

『……ごめんなさい、敬語ばっか…』

「…気にすんな、仕方ねぇ」

『……中也…』

「!…おう」

『………って、頑張って呼びま…呼ぶ、から…待ってて…?』

「…おう!!」

ついてしまった、敬語のくせ。
元々がこうだったがために、余計にぎこちなくなってしまっている。

原因は完全に私だ。
大丈夫にはなったものの、やはりまだこれだけが戻せない。

…戻すのに、罪悪感さえ募ってくる。

『今日ね、のんとは何人かと磯貝君のバイト先だったあそこにケーキ食べに行こうかって話してたの』

「!行かなかったのか…?そんな…お、俺に気ぃつかってとかならやめろよ?」

『ううん、違くて…中也さ…中也と会いた、くて……行くなら、一緒がいいなって』

「何お前そういうデレをいきなり挟んでくるから俺は…っ」

突如何かに取り憑かれたように悶え始めた中也さん…もとい、中也。

あまりにも想定外の反応であったがために、私はそれを見ていることしかできなかった。

『………ケーキ…行かないの?“パパ”?』

「!!!…もう一か『もう言わない』…じゃあせめて恋人さんとでも……」

『…は、恥ずかしいからまた今度』

「よし、たらふく食えよ今日は。椚ヶ丘まで行くか?どこまででも喜んで行くぞ俺は!!」

『…じゃあベルギーにでも行っ「チケット取りに行くわ今から」ごめんなさい冗談です』

本気で動かれかけたから全力で止めた。

『……中、也と…二人で、食べたいな…?』

「!…食べ放題か、喫茶店か」

『……食べ放題…♪』

「おーおー、可愛い可愛い…想像しただけで嬉しそうだなお前…よし、今すぐ行くぞ!腹は…すいてなくても食うわな、お前なら」

『何か言った??』

「いっぱい食べる蝶が可愛いって話だ」

上機嫌になって微笑むとまた撫でられる。
やった、中也と久しぶりに食べ放題。

あそこに行ったらチョコフォンデュもシュークリームも、いろんなドリンクもパフェも食べられるのがいい。

そして何より、私が“あの”食べ放題にこだわるのは…

『中也と個室でいっぱい食べれる…♪』

二人の空間を作れるからだ。
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