第21章 親と子
「そういや蝶、お前最近夜更かししてねぇか?」
『え…何、いきなり』
ご飯を食べてお風呂に入って、私の髪を乾かしながら中也は突然そう言い放った。
「なんとなくだ…隠すの上手いからな、お前」
『…私中也と一緒に寝てるよ?』
「じゃあ俺今日寝ずに明日の朝まで起きて『ごめんなさい夜更かししてます…』……理由は?俺が気づかねぇとでも思ったかよ」
『理由、は…テスト近いけど学校あんまり行けてないし……探偵社の仕事も、あるし…』
「……能力の特性上、睡眠不足に誤魔化しは効くんだろうが…誤魔化してるだけで、ちゃんと疲れは溜まってんだぞ?…髪見ただけでもわかる」
『えっ、何それ怖……ッた…』
手で軽くチョップされた。
いや、待って、でも怖くない?
だって髪見たらわかるとかどんなメカニズム…
「数本だけだが枝毛がある。昨日は無かった」
『なんでそんなの気付くの怖い』
「毎日ちゃんと見てんだよ俺は……テスト前だろ?探偵社の方の仕事で呼ばれることはあるかもしれねえが…書類作業くらい他に任せりゃいいんじゃねぇの」
暇してるやつならいるだろ、あいつとか
付け足すように言ったその言葉が誰を指しているのかはすぐに分かった。
『…皆それぞれお仕事あるし…私は学校に行かせてもらってる身の人間だから』
「……じゃあ、学習の方からもう少し肩の力抜いてみたらどうだ?言っても、余裕の範囲内なんだろ」
『解けないことはないんだけど……今回のテストは多分、皆これまでで一番力入れるだろうからと思って。あんまり嘗めてかかるのも嫌だし』
「絶対ぇ言うと思ったわそれ…それで俺が寝付いたの確認してから作業してたってことか、どうりで寝心地悪かったわけだ」
寝心地とか言われても。
どういう意味だ寝心地って。
『……怒ってる?』
「…少しだけな」
『え…』
あまりにも穏やかな声だったから分からなかった。
怒ってるような雰囲気だって見せられなかったのに。
「もう少し周りを頼ってみてもいいと思うんだよ、お前は……トウェインの件だってそうだし、探偵社のあの野郎に色々言われた時だってそうだが、相変わらず溜め込み癖はあるわ強情だわ意地っ張りだわ…」
『……ごめんなさい…』
「…何が良くなかったのかは分かってるか?」
『…』
何が、と問われて答えるべき答えは分かってた。