第20章 家族というもの
「誰?この子すっごい可愛い♡」
「凄い人数来ちまったな…」
『!!そ、そうだ…あ、あの……来てもらったところで言いにくいんだけど…今日、もうお店閉めちゃって……』
食材をこれ以上取るわけにはいかない。
山の環境が変わってしまうから。
過剰な伐採でこの山を殺してしまうから…結局殺せんせーは文化祭を通じてそれを皆に教えたのだけれど、早く閉めたから来てもらったけれども食べては貰えない。
お仕事終わらせてきたんだもん、寧ろこんな時間に全部片付いた方が奇跡的。
しかし私が俯いていると、皆何故だか驚いたというよりも、がっかりしているというよりも…きょとんと、どうしたんだ?と私の方に目を向けるのだ。
「蝶ちゃん蝶ちゃん、聞いてなかったの?先生達から」
『聞いてなかったって……乱歩さん?何か、知ってるんですか…?』
「ああ、白石さんは昨日先に帰っていただきましたからね…白石さんと付き合いのある方々の忙しさは、先生よく知ってましたから。……昨日の内に、食材確保しちゃってました」
どっさりと保存用の容器を開け、中身を私の目の前で見せる殺せんせー。
『……嘘…?』
「本当ですよ、本来ならあまりよろしくないことではあるのですが…満場一致で先生方からも賛成意見が出ましたので」
烏間先生の方に顔を向けると微笑んでくれて、本当の話なのだと実感した。
嬉しさに泣きそうになるのを堪えながら、ありがとうございますと小さく紡ぐ。
「?あっ、蝶が作ったの一番最初に食べるの私ね!」
「ちょっと待ってよ、いくら小さい子でも、僕もまだご飯は食べてないんだからね!働いた人が先!」
『トウェインさんエリスちゃんに大人気ないことしないの。一緒に出してあげるから我慢して』
「我慢する!!!」
じゃあすぐに作り始めるね、とエリスちゃんから離れて、皆の顔を見てから調理室にまた入る。
入る際に中也と目が合って、そこで思わず立ち止まった。
「?俺は最後でも構わねえし、気にしなくていいぞ」
『…中也は作らない?』
「俺が?……ほお?何、お前俺が作ったもん食いてえの?いいよ、なんならE組全員分作ってやらァ!」
「「「『本当!!!?』」」」
確かに食材は余分すぎるほどにある。
殺せんせー、さては最初からそれ目的だったな。
「ほら、人数多いんだ、とっとと始めっぞ」
『!うん…!!』