第19章 繋がり
「ああ!?なんだこいつ、取引先の人間じゃねえぞ!!?」
「なになに?折角今からいい所だったのに」
「武器も持たずに一人で乗り込んでくるなんざ、いい…度胸……を………ッ!?」
視界が遮られてて分からなかった。
なんで、外がこんなに静かになったのか。
なんで、私の身体を別の感触が包み込んだのか。
なんで…知ってる腕が、今私を力強く抱きしめているのか。
『ん……ッ!!…っケホ、ケホッ…!!…は…ぁ…ッ?』
ゆっくりと痛くないように口を止めていたテープを剥がされて、すぐに中に詰められていた布や固定具を引っ張り出された。
それから手足のテープからも解放されて、ゆっくりと目隠しも外される。
『……っ…だ……れ…?』
おかしいな、分かってるはずなのにこんな事しか言えないや。
顔が滲んで見えないから、確認しないと…ちゃんと誰だか分からないと、また怖いから。
「…………俺……だよ…蝶…っ」
『…中也さ…ん…』
声を聞いて、酷く安心させられて、身体に触れられている間の怖かった事全部が溢れだした。
『あ…っ、ぅ……中、也さ……ッ』
「……怖かったろ…もう大丈夫だ、俺が来た。………ごめんな…遅くなって…」
何も見るな、というように中也さんの方から胸に顔を埋めさせられて、それから背中をずっと、私が泣き止むまで撫でてくれていた。
こんなに泣いたの、久しぶり…こんなに泣かせてくれる人に出会えたのも、久しぶり。
私が嗚咽を止められずに小さく声を抑えきれないでいる間もずっと彼は私を抱きしめていて、ずっとごめん、ごめんと声にし続けていた。
ごめん、なんて聞きたくない。
だけどそんな言葉を…そんな優しい言葉を紡ぐ貴方だからこそ安心出来る。
こんな私が許せない。
大丈夫だ、でいいじゃない…よく耐えたなとか、頑張ったなとか、そんなのでいいじゃない。
中也さんは、悪くないのに。
私の方が、ごめんなさい…貴方を悲しませてしまって。
貴方にごめんと言わせてしまって、ごめんなさい。
『…ッ!!…っ、…ッ』
片方の手が頭に乗せられて、大事に大事にまた抱きしめられた。
手から、全部ちゃんと伝わる。
出会ってまだ間もないはずの貴方が、如何に私を大切に思ってくれているのかが。
それが引き金になって、私は独りになってから初めて…誰かの前で、声を上げて泣きじゃくった。
