第19章 繋がり
「あの……本当に、大丈夫だぞ?」
太宰さんは書類関係のお仕事、織田作は何かの用、そして森さんは別の所へ用事がそれぞれあるらしく、しばらくすると私と中也さんの二人だけになってしまった。
「……さっき、姐さんのところで言ってたこと…あれは確かに俺の本音だ」
ピク、と身体が反応する。
しかし彼は、私の背中をさすっていた手を止めて、そのまま柔らかく私を腕の中に包み込んだ。
この世界に来て初めての感覚に戸惑いを隠せずに身体を固くさせるも、中也さんはそれに構わず話を続ける。
「けど、お前を攫ったのは…俺が一緒にいたいと思ったからだ。一緒に生活したい、それも本当の事だ。………なんでここまで思い入れてんのか俺にも分からねえけど、要するにお前は特別にいいんだよ」
『…一緒に…?知らない相手だったのに…?』
「俺は…全く知らなかったわけでもねえよ、一度助けられたことがある。それに、“こっち側”じゃ有名だろ?まあそれが目的なわけじゃねえけどよ」
助けられたことなんか、そんなものがあるはずない。
私が研究所の外でしてきたことなんて、せいぜい手を血に染めるような行いばかりだったはずだ。
それに、この人は私が何者なのかを知ってるような言いぶりじゃあないか。
『…知ってるの?なのに、一緒にいるの…?“零”と』
「ああ、いたい。…それにお前、見た感じ進んで活動してきたような奴じゃねえだろ……したくねえことは、しなくていい」
『……なんで?…なんで、そんな…』
「勘だな…こんな事で俺なんかを相手に泣いてくれちまうような奴が、進んで妙な殺人ばっかり起こすような事はしねえだろうと思ってよ。優しい奴だ、お前は」
『…………化け物、だよ…?なのにいたい…っ、?一緒に…?』
声を震わせてもう一度聞く。
関わっちゃ、いけないのに…後で虚しくなるだけなのに。
「いたい…お前が嫌だっつっても一緒にいてやる。俺は俺の勝手でいたいっつってるだけなんだからな」
『…ッ……い、る…中也さんとこ…好き、になった』
「!!…本当、か…?」
『ん…一緒に…いさせて、ください…っ』
「……勿論だ。寧ろありがとな…俺の勝手に付き合ってくれて」
自分から抱きしめる勇気はまだないけれど、いつか彼にも恩返しが出来たらな、なんて。
この世界で初めて出会った、あたたかい人。
私の大切な人。