第19章 繋がり
『…あの……』
「言うな…………作りすぎたとか、そういう事は」
お粥はご飯のかさが増すから、確かに料理をし慣れていない人が作るとそうなってしまう。
しかし私が相手に…丼三杯分は少し厳しい処遇ではないだろうか。
『……こんなに、食べ「食わなくていい、俺が悪かった…手前の分以外は俺が食う」…』
何この人、面白い。
『…けど私、多分茶碗一杯分食べるのも無理で……』
「一杯は食わせる、何時間かけてでも意地でも食わせる」
前言撤回、何言ってんのこの人。
『せ、せめて半ぶ「一杯」…無理ですって、一口だって食べれるかど…ングっ!?』
有無を言わさず、無理矢理スプーンを口に突っ込まれた。
しかしそこに乗せられていたお粥はほんの少量で、熱かったはずなのに絶妙な加減で冷まされていて…
『……ッ、は…っ、…は……ッ』
「食えんじゃねえか…お味は?」
『!……何も、しない』
「あ?確かに塩を……これでどうだ?少し足した」
『も、もうい…ッ……?…しな、い……?』
そもそも塩の味ってどんなのだっけ。
食事という概念を忘れかけてしまうほどにはしてこなかったせいなのか、それすら私には曖昧だ。
「あんだけ塩ふって味しねえって…こっちの分でもけっこうしてるぞ!?寧ろ辛ぇくらいに……こっちは?」
続いて何かをまたなめさせられた。
様々な調味料を少しずつ、少しずつ…
しかし、どれもあまりピンとはこなくて、舌に感触がするくらい。
が、そんな中、一つだけ美味しいと感じる味がそこにあった。
『……これ…砂糖…?甘いの、美味しい…』
「…砂糖って………流石に甘い粥は嫌じゃねえか?」
『え………あ…』
想像しただけでも少し気分が悪くなる程度には嫌だった。
それはダメだ、砂糖粥なんて。
ミルク粥に理解を持てない派閥に属する私は、すぐに顔を青くさせた。
「つっても甘い飯とかあるかよ…とりあえずもう少しだけこれは味薄めてくるから…味しねえのも食ってもらって、いいか」
貴方のせいじゃないはずなのに。
私の問題なはずなのに、落ち込ませてるような気がする。
……せめてそんな表情は、させたくない。
それだけだった。
だからその場で頷いて……頷いたことをすぐに後悔はしたのだけれど、中也さんの作ってくれた卵粥の舌触りは優しいものだった。
誰かが私にご飯を作ってくれるなんて