第18章 縁の時間
「ありがとうって…」
『…もし一緒に死ねる時が来たら、その時教えてあげるから。ちゃんと…ふふっ、そっか。一羽だけじゃ……独りぼっちじゃ、なかったんだね…』
「蝶っ…?……お、おい…?」
『ん……大丈夫。中也のおかげで、大丈夫…こんなに嬉しいの、生まれて初めてだよ』
中也の、言い過ぎだとも捉えられる言葉が頭の中に流れてくる。
本っ当にその通りだ、すごいな中也は。
すごいよ、貴方は…
「嬉しいって…なんだよ、そんな擦りつくな擽ってぇ……仔猫かよお前は、人懐っこいなマジで」
『…“運命のお相手”さんにはこれくらい懐くのも当然ですって……ね?』
「……それ絶対いつか教えろよ、俺が気になる」
『それまで一緒にいてくれたらね』
クス、と笑えば上等だ、と少し歯を見せて笑ってくれた。
人との繋がりって、本当によく分からないものだ。
自分がなんとも思ってなくても、相手からすればとても大きな事で、かけがえのないものであって。
そんな少しの行いが、巡り巡って返ってきたのだろうか。
ある人は言った、この世に偶然など存在しないのだと。
またある人は言った、ごめんね、そして待ってて、と。
これまでの世界での行いも、無駄だったようで無駄じゃなかった。
全部全部、繋がってた。
空虚に過ごしていたのが馬鹿みたいだ、なんでもっと早く気付かなかったんだろう。
私はきっと、貴方と出逢うためにここまで長く旅をしてきたのだ。
いつかも言った、そして貴方に言われたそんな言葉。
「ええっと…僕は深く聞かない方がいい話…かな?」
『…内緒です、中也以外には』
「……そうかい。幸せそうなら何よりだ…けど蝶ちゃん、いいのかい突然そんなに中也君に甘えきっちゃって?彼……幸せ過ぎてか照れすぎてか、固まった上にちょっと鼻血出てるみたいだけれど?」
『!?え…中也!?ちょっ、なんで鼻おさえたまま固まってるのよ、早く処置を…』
「!?何してるんだ蝶!!もう嫌になったのか!?猫は気まぐれってそういう事か!!?」
『止血くらいして下さいってば!!!』
何故か悟りを開いたような目をした中也には離してもらえず、結局首領が無理やり処置をしたというのは別の話。
運命の人……か…?
次また会えたら、あの黒蝶にでも聞いてみよう。
そして、何かの力で繋がっているこの人との関係をこれからも___