第18章 縁の時間
「さ、寂しかったらせんせーに抱きついてもいいんですよ白石さん!!?」
『…』
一向に離れる様子のない蝶にいじける担任。
まあ当然の結果だろう。
「よーしよし、いい子だ蝶~♪もういつまででもいろーここに」
「「「ダメだこの親バカ!!」」」
『……のに…ずるい』
ぽつりとこだました蝶の声。
それに全員静かになる。
「?どうした?えらくご機嫌斜めな…」
『中也が、いつもいつもしてくるのに……私からしたらすぐに離すの?ねえ……澪、キス不足で欲求不満』
「「「「ぶっ!!!!」」」」
揃って俺まで吹き出した。
また話が振り出しに戻っちまった上に使い方をいい加減に覚えないうちの蝶。
つうかここで澪さん出してくんのかよ!?ああそうだな、澪さんだったな今!!
「だからそれはまた帰ってからで…『そっちからは好き放題するだけしてくるくせに』そりゃもう完全にタイミングの問題で……って、うわぁって顔して見てんじゃねえぞ手前ら!!?」
『……じゃあいい、教室戻る。けど中也我慢するからこっち来ないで』
「そうかそうか、戻るか!それならよ……あ?」
そして再び訪れる沈黙。
蝶の再びの突然の俺離れに目を点にする俺含める野次馬共。
『蝶の視界に入るの禁止、気配感じさせるのも声出すのも禁止』
「それお前相手になると俺椚ヶ丘に入れなくなるやつじゃ『でも出ちゃダメ、校舎内にいなきゃ蝶怒る』んな無茶な!?」
『して』
むっすぅ、とむくれる蝶も可愛……いのはおいておいて、五感が人並外れて敏感な上に経験を重ねすぎた蝶を相手に同じ建物の中で気配なんか消せるわけがない。
ましてや俺だぞ、こいつ自身が意識しねえような相手ならまだしもこの俺だぞ。
「いいじゃん中也さん、させてあげるくらい。一回覚悟決めればそれで終わるし…終わったら蝶と教室にもこれていいことだらけじゃん?」
「手前半分面白がってんだろカルマ…」
今のこいつがたったの一回でキスを止めるわけがない。
と、呆れる俺だが目の前の少女の目を見てしまえばそんな考えも吹き飛んでしまう……俺もとことん弱ぇな、こいつには。
「……じゃあいいよ、いいけどお前…壁だけ張れ、壁だけ。野次がうるさくて仕方ねえから」
『!…』
一瞬で張られた特別な壁…素直な奴だ。
嬉しそうな顔してるくせに、恥ずかしがりやがって。