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第18章 縁の時間


イリーナには勿論納得してもらいはしたが、そこまで細かく言うのは蝶に悪い…どうしたものか。

「ただ恋人として接しているにしては、先程のことといいやはり心配にもなりますし…何か、心配事でも?」

「…手前らに気付かせてねえだけで、こいつの頭の中はいつでも心配事だらけだよ。そんでそれが溜まりに溜まって、たまにこうやって爆発しちまうだけだ…爆発したらその後…」

「「「その後……?」」」

ただの極度な寂しがり屋の甘えたがりになる。
俺限定のな。

言いながら優越感のせいでニヤけそうになったが、キメてやった。
言った直後に蝶の腕に力がまた入ったのに応えるように俺もまた少し腕の力を強める。

言っていることは事実だが、スケールが違いすぎる…こいつの寂しがり屋はそんな言葉に収められるほどのもんじゃあない。

常に人の情に飢えている…常に俺からの愛を欲している蝶にとって、“寂しい”だなんていう状態にまで陥る事はあってはならない事なのだ。

いつも隠して生きてきたから。
見ないふりをして、生きてきたから。
気付かないふりを続けていたから。

素直になるのはいい事だが、素直になったらちゃんと俺が支えてやらないといけない。
まだまだ子供で、誰よりもこいつは大人なのだから。

ポカンとする一同は恐らくそこまでの事だと考えてはいないのだろう。
そして恐らく、蝶も気を遣わせたくは思っていない。

「………要するに、中原さんが不足している、と?」

「根本的にはそうじゃねえはずなんだが、そういう事だ……あんまり怒らねえでやってくれ」

サラ、と髪をとかしながら撫でればピク、と蝶の身体が反応する。
こう言われて普段なら文句の一つでもあるかと思うのに、反論一つ帰ってこない…まあ、今回のに関しちゃあ寂しい通り越して初めての経験だっただろうからな。

もう何度目だよ、俺がこいつにプロポーズするのは…永遠を誓うのは。

フ、と思わず笑みが零れた。
少女は今回、確かに寂しくてそれが爆発してしまったのだが…それ以上に、嬉しかったのだ。

寂しくて、俺が蝶に愛を注げば、こいつはいつも初めての感情に出会って頭がいっぱいになってしまうから。

落ち着く時間が必要なんだよな…ちゃんと、嬉しいって理解するまでに、時間がかかるだけなんだよな。
だから、本能のままに俺と離れたくなくなっちまうんだよな、蝶…
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