第18章 縁の時間
「おい蝶!!」
『!!な、んですか…頭冷やすから、ちょっと一人にし「お前、勝手に忘れてんじゃねえぞ!!俺は全部まとめて“お前”に愛を誓った男だ!!!」!?い、いきなり何言って……ちょっ!?』
ベッドの上で顔を隠す蝶の手首を掴んで目を合わせ、防音用に壁を張るように耳元で呟く。
それに肩を震わせてから、少し怯え始める蝶。
「…大丈夫、俺はお前の怖がるような事は何もしない……知ってんだろ、もう」
『!………ん…』
どうやら迷彩効果まで付けてくれたらしい…やはりよく出来た奴だ。
「…………さっきお前、ゾッとしたなって聞いただろ…勿論したぞ、流石に知らなくてスケールもでけえ話だったし…何より今こうして触れてるお前の体温や、ドキドキしてる心臓の音を聴いてりゃ、全くもって信じられねえ」
『…この身体も特別性なの。勿論元の私の身体のは寸分違わず同じだけど………ねえ、気付いた?私が言った事、どういう意味か』
「……馬鹿にすんな、流石に気付く。…要するに蝶……お前…“一度死んで、死後の世界に住んでいた人間”だったんだろ」
『!…人間って言い方が貴方らしいよ……そうだね。本当は魂だけの存在のはずだった……けど、もう今は幽霊みたいな気分だよ』
幽霊と魂だけの存在というのはまた別物であるらしい。
そこも気にはなったが、今の問題はそこじゃあない。
「なあ…お前の体を造った奴は、どうしてお前をそういう体に?……追い出されるって…帰れないって、本当に何が…」
『…私の身体がこういう風になったのは、別におかしな話じゃないの。その世界じゃあ、ちゃんと生きてる人達が住む世界に直接出向いて行うお仕事なんかもあったから……だから、普通の人間と同じように生活ができるように、魂の器となる肉体を開発したのがその人』
私が追い出される前に、他の世界でもちゃんと私が生きられるようにって
そう零した彼女はまた泣いていた。
素直になった…それは良かった。
しかしどうだ、結局俺は何をしてやれた?
『…私の話、長くなるけど聞きたい?……私の存在、ちゃんと知った今でも同じ目で私の事見てくれてるの、気付いてるよ』
「!!……敵わねえな、ほんとに」
『うん…ひどい事言ってごめんなさい……でも、ちょっと怖いからさ…さっきみたいに腕枕して、撫でててよ。優しくされたくないんじゃないの…』
「…おう」