第15章 大切な人

「お兄ちゃ…って……？ち、蝶ちゃん？…お、落ち着いた？ほら、僕だよ分かる？」

『え…？……ぁ…ご、めんなさ…』

「………謝らねえでいいだろ、別『ひ…ｯ、ごめんなさ……ッ』…それ以上言うんなら怒るぞ」

『！！…中也さ……っ……ゃ…ごめんなさ……ぁ…怒らな…ｯ、ごめ「蝶」っ！…』

言葉が紡げなくなった。
何も言えなくなった。

中也さんに怒られる。
中也さんが怒ってしまう。
それは良くないこと、それは私がよくないってこと。

私がいい子じゃなかったから。
私が悪い子だったから。

「中原君、あんまりこういう時にキツい言い方は…蝶ちゃん、僕が誰か分かるかい？」

『……しゃべ、ってい、いですか…わ、たし……悪い子じゃ「いいよ、何でもしゃべって良いから。話をするのは大切な事だ」ぁ…首、領…』

「うん、分かってるね。えらいよ、いい子だ♪じゃあここはどこか分かる？」

『…わ、私何かされ「何もしないから。僕らは君に何も酷いことなんかしないから」……ｯ、い、医務室…は、針とか使わな…使いま、せんか…？痛い事、とか……』

その先は言葉を詰まらせた。
しかし首領は下から私を見上げるようにしゃがんで、表情を柔らかくしてしないよ、安心してと微笑みながら言う。

『ほ、んと…？……悪い子じゃ、ない？』

「うん、悪い子じゃない。少し怖かったんだろう？大丈夫だよ、怒ってない。中原君も怒ってないから」

『…………でもさっき私ごめんなさいって言っちゃっ…「口ではそう言ってたけど怒ってないよ。蝶ちゃんが悪い子だったわけじゃない」！！…じゃあ、中也さんは……中也さん、は…私の事、捨てない…？どこにも置いていかない？痛いことしない…？』

「「！！！」」

何故だか目を見開いて険しい表情を見せた二人にどこか緊張感を覚えた。
……何、この表情。

そんな顔しないでよ、変なものを見るような目で見ないでよ。

どうしよう、どうしよう、また居場所が無くなっちゃう。
この二人にも変な子だって思われちゃう。

だから気味悪がられるのに、だから気持ち悪がられるのに。

「蝶、お前…なんでまたそんな事……？」

依存していた兄の声が頭の中で反復される。

ああ、でも本当に兄妹なのかなあの人は。

『…おか、しなこと言ってごめんなさい……い、い子にしま…す……』

「……中原君、ちょっと」

「！はい…」