第15章 大切な人
『…私、太宰さんの人間失格でも能力の効果が消えないんだよ?』
「そりゃ、あいつが木偶なだけだ…俺の異能がありゃお前の壁なんざガラス見てえにすぐ壊れるだろ」
『……変な体質だよ?中也さんより子供なのか大人なのかも分かんないような』
「俺よかよっぽど子供だよ、博識なな…お前は十五で俺は二十二だ、そんだけだ。そんでお前の体質がお前を生かし続けてきたのは………この世界で俺と出逢わせるためだ」
『…………そ、っかぁ………それならさ、実行する日が来るかどうかは分からないけど……中也さんにしか頼めないお願い、しててもいい?』
中也さんは私の言い方に何かを感じたのか、覚悟を決めたようにして少し間を開けてからおう、と口にした。
『ん、本当はそうならないのが一番なんだけどさ……________』
「!!!…んな、事……が…ッ?……おい、なんでそんな事俺に頼むんだお前は…!?」
『…他の人なんて嫌だもの。お願い…私じゃどうにも出来ないし、お願い………もしもの時でいいからッ…約束、して……っ?』
「んな事…っ、お前がそうならねえようにしてやるよ……絶対に……ッ」
『うん、頼りにしてるね中也さん…今のは絶対内緒だよ、私と……後はあいつしか知らない事だから』
私があいつ、と口にしたところで中也さんの目が見開かれる。
「……ちょっと待て、それって…あいつは知ってるって事なんじゃねえのか」
『うん………この間イトナ君の件で出くわした時にさ、気付いちゃった。何しても死ねない理由が分かっちゃった』
「……………お前、死ぬなよ…絶対。意地でも死ぬんじゃねえぞ」
『…ん、頑張る…………じゃあ中也パパ、蝶さんプリンが食べたいです!』
声色を変えて無邪気にふざけて笑ってみせると、中也さんの手が頭に乗せられた。
「馬鹿…お前、パパ派かよ……」
『私は一度もお父さん派だなんて言ってないよ…ああ、でも中也さんの娘に生まれれば良かったかなあやっぱり』
「!なんでだ?」
『そしたら生まれた時から中原蝶じゃない?』
ぶっ、と吹き出した中也さん。
これはあれだ、私、大きくなったらパパのお嫁さんになるの現象と割と近いやつ。
「お、前はそういう事を……っておい、考えてみろ。そしたら俺には別の嫁が『あ、やっぱりダメだね、没』早えなおい!!」
「ったく………行くぞ」
『!…うんッ』