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第14章 わからない人


「…これは誰の血だ?」

『それは…ッ』

「………どう見ても返り血じゃあねえだろ、見れば分かる。これはお前のもんだ…怪我すりゃ人間、血が出るもんなんだよ。何が普通の人間じゃねえだ、馬鹿馬鹿しい」

『…血、出るけど……おかしいでしょ…?分かってるんでしょう!?……そこ、切られたけど傷が「それがなんだよ」だ、だから…!!』

「いいじゃねえか、人よりちょっと強ぇだけだ…それに何より、お前の肌に傷が残らねえのに俺は心底安心してる。お前が痛い思いをしちまうのは嫌な話だが、その点を考えれば本当に良かったと思う」

慈しむような目で私を見つめ、そう言う中也さんに開いた口が塞がらなくなった。
まただ、またこの人、そんなことばっかり言って…

『お、おかしいんだよ!?切られてもすぐ治っちゃうし、毒も効かないし酸をかけられても再生するし…っ、何…されても全部再生しちゃうんだよ!!?』

「お前の体質が少し変わってることと俺がお前の傍にいることとは関係ねえだろ、何の問題があるんだよ」

『何の問題がって…っ、なんで気持ち悪がらないの!?』

「気持ち悪く思わねえからだ」

即答する中也さんは私の頬にもう片方の手も添えて、そのまま私が顔を逸らせないように固定する。
癖まで見破られてる…?

こんな、短期間の間に?

『だ、から…普通気持ち悪がるし、こんな奴の事思い出したところで…』

「………お前が気にしてんのは自分の体質よりも、それで俺が離れていかねえかどうかなんだろ?」

中也さんの声にビクリと肩が震えた。
そうだよ、中也さんのおかげで体質なんてものをごちゃごちゃ考えなくて良くなって…だけどそのせいで余計に今のこの人に打ち明けるのが怖くなって。

「俺のしつこさと諦めの悪さはよく分かってるんじゃねえのか?…無理に言えとまでは言えねえが、俺はお前を理解したいと思ってる」

『…なんでそんなに……?中也さん、太宰さんにまた何か言われた…っ?』

「お前が俺を救ってくれたからだ…お前が俺を想ってくれるからだ。……記憶が無くなったと知って、お前の存在をちゃんと知って、俺みたいな奴の事をそこまで想ってくれるような奴がいると分かって…正直俺は泣きてえくれえに嬉しかったんだよ」

その気持ちは痛い程によく分かる。
現に今、私が中也さんに強く想われてるからだ…想ってもらえているからだ。
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