第14章 わからない人
「ち、蝶…?悪かったよ尾崎幹部の事は黙ってて、でもこうすれば多分お前なら付いてくるだろうからって…」
『変な言い方しないで頂戴、私今ちょっとイライラしてるから話しかけないで』
「イライラか!蝶がイライラするだなんて事久しぶりじゃのう!ソラが入ってきた時以来ではないのか?」
「お、尾崎さん!これ以上刺激しない方が!!」
「嫉妬しておるのではないのかえ?」
ドキリと胸が鳴った。
そうだよ、そうに決まってる。
して何が悪いの?何も悪くない…だけどしちゃいけない人間だから、ここまで必死になって隠しているのに。
「ほれ、迷っているのであれば私が中也をもらっていくぞ?」
「だ、からさっきから何を…っ!!?」
『!!』
紅葉さんが触れたのは中也さんの手。
手袋を外したら、その薬指にはまだ指輪がはめられていた。
嘘でしょ、意味なんて分かってないんでしょ?
全部、覚えてないんでしょ?
それに触れた紅葉さんの手に、咄嗟に中也さんが抵抗する。
「姐さんそいつは!!!」
「!覚えているのか?」
「い、いやそうじゃねえけど!!……っ、だからこそ大事にしなくちゃいけねえだろうと…」
「……何、捨てるわけじゃあるまい、外すくらいの事よいではないか」
クス、と紅葉さんは口角を上げてから、金色夜叉を繰り出した。
『!!!何して…っ』
「おや?関係ないなどと口にしていた蝶は随分とご立腹な様子じゃの?」
『い、いや…だって、なんでその人に金色夜叉なんか…』
「中也に抵抗されては敵わんからのう、先に封じておくまでじゃよ………指輪なぞはめていては違和感があるじゃろうて。それに罪悪感も募っ______」
指輪に紅葉さんの指が触れ、中也さんの首元に刃物が当てられた瞬間の事。
「え…な、何が!?」
「あ、姐さん!?夜叉が…!!!」
金色夜叉が砕け散る様に粉砕され、消え失せた。
そちらに全員の目が向けられているうちに、私の身体は動いてしまったのだ。
紅葉さんの手に銃口をピタリと当てて、中也さんの懐から抜き取ったナイフを首元に突き付けたまま背後から固定する。
「……そんなに取り上げられたくないかえ?」
『…言わないで』
「認めればよいじゃろう、まだ好いておると」
『好きじゃない!!!……っ、嫌い…!!嫌いなの!!!』
言葉が止められなくなった。