第14章 わからない人
「首領…俺なんか拙いこと言いました…?そ、そうっすよね、振った男の飯なんざ……ってあああなんで告白なんかしたんだ俺、らしくねえにも程がある…!!」
「落ち着いて中原君、逆だから。逆」
首領の逆という言葉に目を丸くして逆?と聞き返す。
「うん、逆なんだよ。今こんな状況だから君には絶対に言えないんだろうけど…あの子がこの世で一番好きな食べ物は、何を隠そう君の手作りのもの全てだ」
プチトマトは嫌いらしいけどね、と言う首領に目を大きく見開いた。
え、待て、どういう事だ?
俺ついさっき振られたばかりだよな?
つかいらねえってはっきり言われたよな今、しかも挙句の果てには逃げられたよな?
「……俺、料理すら振られたんすかね」
「!ははは!面白い事を言う…あの子は君の事を振ろうというつもりもなければ、遠ざける気なんて本当は無いんだよ」
「それはどういう…俺、嫌がられてるんじゃないんですか?交際相手が自分の記憶だけ無くしてそれでも想い続けるとか、普通出来る奴ばかりじゃねえどころか嫌にもなるでしょう?」
「蝶ちゃんが君を嫌になるだなんてこと、地球が滅んでもない話だよ。ただ今は君の応対に困惑して戸惑ってしまっているだけさ……それにあの子は、今回の件で君に対してかなりの負い目を感じてしまっているから」
薄々、あの綺麗な少女の言動や必死さからそんな気はしていた。
深く関わるとろくな事がない、もう関わらないでくれ…俺が嫌なのかと思いはしたが、それでも俺の事を考えてのあの言葉だったのだろうと。
「負い目って…俺、執務室で誰かに襲われたんすよね?それなら対処出来なかった俺の責任であって、別にあいつのせいじゃ……あいつが犯人だったわけじゃないんなら、寧ろ本当にただの恩人じゃないですか」
「そうなんだよ、どう考えても彼女が悪かったところなんかただの一つも見当たらない…けどまあ、状況が状況だったからねえ」
「……首領、俺に何か、まだ教えて下さってないことありませんか?」
首領はこちらを見据えてから、少し目を細くして言葉を紡ぐ。
「あるよ。蝶ちゃんの事を覚えていなかった君には説明のしようがなかったから伏せておいたが」
「俺が襲われた日のことだけでも、全部話して下さい…力にはなりてえのにならせてもらえねえと、流石の俺でも辛いですから」
あいつが辛いのは俺も辛い。