第14章 わからない人
スッ、と中也さんの両手に頬を包まれ、それに再び肩を跳ねさせた。
左側だけまだジンジンしてる…だけど不思議。
中也さんに記憶は無いはずなのに、全然痛くなんてされなかった。
この人頭に血が上りやすい上に、力なんかありすぎるくらいにあるのに。
目を反射的に強く瞑ったのを見てか、中也さんの声がまた響く。
「加減はしたつもりだったが、悪かった…とりあえず冷やして、それからゆっくり話そう」
『!…だ、だめっ、もう私と変に深く関わったりなんかしたら!!』
「俺が拾ってきたんだ、最後まで責任もって面倒見るさ……っと、…お前ちゃんと食ってんのか?今からまずは飯食うぞ、飯」
『!?ちょっ、今そんな気分じゃ……きゃ、ッ!!?』
いつかの時のように、私を攫っていくように横抱きにして、中也さんはそのまま立ち上がる。
「いいから飯だよ、無理矢理にでも食わせねえとお前食わねえだろ」
『な、んでそんな事…!』
「勘」
『た、食べますから!!ていうかちゃんと食べてますから!!!』
「じゃあもっと食え、んでもって胸以外にも肉付けろ。成長全部そっちに持っていかれてどうすんだ」
咄嗟にバッと胸を隠してワナワナと中也さんを見る。
ま、前にも増してデリカシーが無い…気にしてるのに、割と本気で。
『せ、セクハラ!!首領、この人セクハラで訴えていいですか!!!』
「うん、ちゃんとご飯食べるんだよ」
『ブラック企業ポートマフィア!!!首領もう嫌い!!二週間口聞かない!!!』
「ゔッ、それは…っ」
「………やけに首領とは親しいんだな」
ポツリと漏れた中也さんの声に気が付いて、中也さんの方にまた顔を向ける。
『中也、さん…?』
「!…いや、何でもねぇ。ほら、何が食いたい?それか欲しいもんでもいい、何でも言ってみろ」
何か誤魔化されたような気がした。
けれど多分、そこは深く聞かない方がいいところ。
それだけ察して何が食べたいかを考える…こうなったら絶対折れてくれないもんなこの人。
『………………プリン』
「却下、飯だよ飯。デザートはその後だ」
『……ご飯いらない。もうお腹いっぱ「お前が夜何も食ってねえのは知ってんだぞ」…』
ご飯って、何を食べればいいの?
私、本当に今食事なんてする気分じゃないのに。
『………いらない』
お腹が全然空かないんだもの。