第13章 愛ゆえに
「蝶さん、かなり今更なお願いがあるんだが」
指を抜いて、そこについた蜜を舐めとってから中也さんはそう口にした。
『な、っに…?』
「大事な話……つうか、多分お前にとっちゃ嫌な話になるかもしんねえ」
何故だろうか、どことなく焦ったような雰囲気を醸し出す中也さん。
必死そうな顔で私を見つめるその目に覚悟を決めて、いいよと返す。
「…“最後まで”って意味、分かるか」
『!!…それ、は……調べてなかった』
そうか、と言ってから中也さんは両手で私を抱きしめて…いつもとは逆で、まるで中也さんが甘えるように声を出した。
「通常、こういう行為は戯れるためのもんとしてする事も多い…が、最後までするのを前提としてこういう事をすんのはかなり意味合いが変わってくる」
『意味合い…?』
「これは元々、子供を作るために行う行為だからな」
どこかでそんな気はしてた。
受精卵を作って、それが生命になるということ。
そして卵は女の人の卵巣から…前に口でした時に中也さんが達して、その時初めて存在を認識したあれが精子だったのだと。
そこまではなんとなくだけど、私の頭の中にあった知識と組み合わせて分かってた。
そうか、通常はそうだったんだ。
口で飲み込むようなものじゃあなくて…本来は卵と結びつけるためのもの。
卵があればの話だけれど。
『……うん、気にしないよ。中也さんが私の事しか考えてないの知ってるし、気にしない』
「!そりゃ意外だ…嘘吐いてねえよな?」
『産めなくてもいいって、それでも女の子として一緒にいてくれるって言われちゃってたから。中也さんがそう言ってくれるんなら、もう何も気にしなくていいもの』
「………お前の体内に出したとして、そうすると何かお前の身体に異常が生じたりはしねえか?」
『飲んでも何ともなかったから大丈夫だよ』
根拠はない。
実験施設でも、それは試された事がなかったから。
もう分かった、どうするのか。
指じゃないものがそこに入る…まだ成長しきっていなくて小さい上に、敏感すぎてすぐにナカを締めてしまう私を気遣って……卵胞すら存在しない身体の私を気遣って、そこまで進めなかったんだ。
___本当に死ぬにしても生き返るにしても、百九十という限りがあるかもしれないこの身体。
いいじゃないか、寧ろ嬉しい。
ちゃんと、女の子の身体をあげられる。