第12章 夏の思い出
「こういう攻撃にはめっぽう弱くなって、手も足も出なくなっちまうもんな?」
『……知らない男の人、苦手だもん』
「知ってる…んで、お前が感じやすい体質だってことに心当たりは?俺から言わせてみれば、お前媚薬使われてんじゃねえかって思うくらいには普段から感度が高ぇんだが」
『…多分、だけど気配とかに敏感なせい。生きすぎて経験積みすぎて、感覚とか全部…あと、多分すっごい痛がりになっちゃったから』
ニヘラ、と笑うとピクリと眉を動かしてから、私を覆うようにして抱きしめる。
『!なぁに…?』
「いや…こうしてやりたくなっただけだ」
『……えへへ、そういうとこ大好き』
「…安心しきってる時は普通の感度になってるとは思うんだがな」
背中普通に撫でてても感じてはねえみてえだし、と言われて気が付いた。
気配を察知する時もそうだ、頭の中がぐちゃぐちゃになってて気付かなくて、今回だって銃で撃たれた。
それにモビーディックで媚薬というものを盛られた時も、激しい怒りで頭が埋め尽くされてカッとなり、薬の効能さえもが消え失せてしまった。
…そうか、この人に触れられて特別普段より敏感になっちゃうのって……そういう事。
『……私、中也さんの事大好きなんだなぁ』
「は?どうしたよ一人で納得し始めて」
『多分集中力の問題だよこれ…かなり難しいけど、中也さんに恋人っぽい触れ方されちゃったら、そういう方向に思考がいっちゃうから……余計に敏感になっちゃうの』
「集中力の問題って…なら集中力を高めて甘えてきてる時にも呼び捨てで呼べるようにして欲しいもんだなぁ?」
ニヤ、と笑われて引き攣り笑いになった。
目を逸らしていれば分かったよ、と呟かれ、再びそちらを見ると真剣な眼差しで私を見つめる中也。
……ううん、やっぱりどうも慣れない。
「お前がいけそうだと思う時にどうにか俺に伝えてくれたら、深ぇのしてやる事にするよ…気持ちよさそうにしてる刺激控えめのやつならしてやってもいいが」
『…あれ、好き……』
わしゃわしゃと撫で方を変えられて、恥ずかしさにまた目を背けた。
「了解。……気持ちよすぎんのも考えもんってか、んで蝶さんよ?なんやかんや話はしたが…朝までキスコースはまだこれからだって分かってっか?」
『え……え!?ちょっ!!…ンンン、ッ』
触れるだけの彼の唇は優しいものだった。