第12章 夏の思い出
山を降りて本校舎の駐車場にとめさせてもらっている車へと向かう道中。
大体の子達がそこを通らずに帰宅するものの、私の身を案じてか中也さんが久しぶりにいるからか、カルマ君に前原君、磯貝君…そしてカエデちゃんと潮田君と杉野君、神崎ちゃんが同じペースでゆっくりと歩いていく。
そんな中、本校舎の校門が見えた頃に立原と広津さんと合流し、クレープを食べに行くということを伝えたところのことだった。
「おやおや、これはこれはエンドのE組さん御一行ではありませんかぁ?本校舎に一体何の用で……?」
見下したような態度で近寄ってくる生徒が数人。
成程、よく出来た教育法だ。
差別意識を生徒にちゃんと浸透させている。
「ん?待てよ、この顔………!ま、まさか噂の白石蝶か!!?」
「ぁあ!?」
「「ひぃいい!!?」」
私を指さした男の子達を脅すように中也が威嚇する。
こういう時は本当に子供みたい…嫌いじゃないけど。
『噂って……ってあれ?竹林君…?』
ちらりと見えた見知った顔。
彼もこちらに気付いたようだけれど、すぐに顔を逸らしてしまう。
流石にそれでは失礼すぎやしないか。
『ちょっと待ってよ、久しぶりに「…体の調子はどうなんですか」へっ?あ、うん…大丈……じゃなくて、竹林君本当にもう戻ってこないつもりなの?』
「「「ストレートに聞いた…!!!」」」
「「あの白石蝶に話しかけられてる竹林何者……っ」」
竹林君は眼鏡をクイ、と直してから、戻るわけがないでしょうと当然のように言い張る。
『……そんなにA組が大事なの?勉強だけなら別にそこにこだわらなくたって…』
要領が悪い…クラスを変えてまで勉強をしたところで、教え方がなってなければ苦しくなるだけのもの。
殺せんせーの授業がどれほど効率のいいものなのか、それは私自身が一番よく理解している。
「…君には分からないだろう?聞けば一学期の期末テストでも、全て満点だったそうじゃないか」
『それが?』
当然のように言って返すと、周りがざわめき始める。
竹林君だけではなく一緒に来ていた皆や本校舎の生徒までもがだ。
「それがって…っ、君のように頭の良い人が口を出さないでくれよ……!!」
突然感情的になった竹林君。
けれども意外な事に、彼の言葉を聞いてピクリと反応したのは、私ではなく中也と立原だった。