第12章 夏の思い出
目にこびりつくような紅色。
そこに倒れる真っ白な……小さく綺麗な、小柄な少女。
近くのベンチには馬鹿みたいにデカい袋が置かれていて、その中には大量のりんご飴やらぶどう飴やらが入っていて…地面に倒れた少女は、食べかけたりんご飴を持っていて。
「……おい、お前が気配に気付けねえわけねえだろ…っ?」
発砲音が無かった…サイレンサーなんてもんが無くても、お前なら気付いて躱せるだろう。
全く、愉快な冗談じゃねえか蝶、そんな方法でかける心配は……一番褒められちゃいけねえもんだ。
「!!いたッ!中原さん!!!今太宰さんにお願いして、森さんと一緒にヘリで向かってもらってるんです!とりあえず来てください、出血が酷くて…っ」
谷崎とかいう立体映像の異能を持つ探偵社員が俺に気づいて呼ぶ。
それでようやく頭が蝶だと理解して、体を動かしてそいつの元へと走らせる。
「!……弾は。どこに当たった」
蝶の体のすぐ隣に膝をつく。
「背中に…今与謝野先生が診てくれてるんですけど、中で弾が止まってるみたいで「詳しい場所を教えろっつってんだ!!!」!!…っ、浴衣の穴が空いてるので、恐らくここかと」
指された場所には確かによく見ると穴が空いている。
黒色だから分かりにくかった。
「女医、退いておけ。弾は俺がとっとと出す」
「!あんた…っ、でも、蝶が撃たれた体の表面はもう傷が塞がってて……」
「手前らこれ見て分かんねえのか!!体ん中で威力が殺されて、帯の前板で止まってっから貫通してねえんだよ!!!」
「「!!!」」
蝶の体を異能で浮かせて仰向けにさせ、帯を外し始める。
「ちょっ、あんた!こんな人がいる所で何を…「はいはいはーい!!すみませんねえ、ここから見るの禁止ー!!」!太宰…に、担任!?」
ちょうどいいタイミングで太宰の木偶と事態に駆けつけた担任が、空き屋台のセットをつかって周りの目からこの場を遮り始めた。
視線も気にならねえしタイミングもちょうどいい、悔しいが流石青鯖野郎だ。
強引に帯を放って前板を外すと、予想通りそこには銃弾が顔を覗かせていた。
傷が開いていなかったら、蝶でこの出血量は有り得ねえ…相当中が抉られてやがったな、これは。
すぐさま異能で銃弾を蝶の体から取り除けば、紅く染まったそいつの肌が再生していき、傷口がすぐに塞がれる。
弾は回収しておいた。