第12章 夏の思い出
唾液に混ざって薄赤色の血液が口元を伝う。
『ぁ……ッひ、ゃあっ……!!?…ああッ……ひゃっ、なんで!!!』
中也さんは私の唇から首元にかけて伝っていたそれを、いやらしく舌で舐めとった。
「舐めたらそういう反応してくれっからな…お前の何を堪能しても、俺は喜べる。血なんざいくらでも喜んで飲んでやるさ、マフィア脳なめんな」
言ってることはどう考えたって頭おかしいのに、口元を無理矢理拭う中也さんが色っぽい。
年下なはずなのに大人っぽくて、血を飲むだなんて行為の後にそんなことをされてるのにゾクゾクして…
『……ッ、それ、関係無…っ!!?』
突然顎に指をかけられて、無理矢理中也さんの目を見つめさせられる。
表情はもの凄く嬉しそうで…どこか背徳的なものを感じさせる表情。
そんな表情にさえ胸が高鳴って、何故だかドキドキし始める。
恥ずかしいはずなのに、何も抵抗できなくなる。
「お前……俺の事なめてっとマジで体もたなくなっかもしんねえぞ?こちとら現役なもんでなァ…家で一日中縄にでも繋いで、嫌とも言えねえくらいに感じさせ続けて、今より従順にさせてやってもいいんだぜ」
初めて、彼の本性が垣間見えた気がした。
言ってることは滅茶苦茶だし非道徳的なものだし、いつもみたいに愛情をたくさん感じさせられるようなものでもない。
なのに…私もそっちが本職だったからなのだろうか。
たまらなくそれが大人っぽくて、それがたまらなくかっこいい。
もう分かってる、この人には逆らえないし、逆らおうとも思えない私は…
『ぁ……っ、…ちゅ、やさ…ん』
「なんだ、幻滅したか?」
『………ッ、私、おかしいのかもしれない。…無理矢理、強引にそういうの…中也さんにされるの、堪らないの……っ、そんな事言われてるのに従いたくなっちゃって…』
後頭部に回っていた中也さんの手が項に触れて、私の好きな…心地の良い感じ方をしてしまうようになった触り方で撫で始める。
それだけで頭が蕩けそうで、それに加えてまた頬に手を添えられて見つめられて…
ダメだ、夏休み中に一気に身体がおかしくなっちゃった。
「素直な奴…………お前、やっぱり実はマゾ気質な部分あんだろ」
『ちゅ…やさんに会う、までこんな……ッ、ぁ…なかった…っ、!』
「可愛い事してくれっから、予定してなかった育て方になっちまったよ」