第12章 夏の思い出
結局は中也さんが車を運転して椚ヶ丘に到着する。
二人共浴衣だったから、色々と配慮してくれたのだろう。
……それはいいとして浴衣中也さんがいけないです、やばいです。
ていうかワインレッドとか何なのもう、ありがとうございますご馳走様です、紅葉さんナイス、紅葉さんグッショブ。
筋フェチの私からしてみたらとんでもない量のフェロモンと共に破壊力が凄まじいことに…
「………チラチラ見過ぎだろお前」
屋台で騒がしい中なのに聞こえた、笑いを堪えるような声。
『み、見てな…っ!くない……けど、だって中也さん浴衣…っ、写真撮っていいで「ダメだ」な、なんで?一枚くらい…』
「…せめて後で一緒にお前も写れ。それならいい」
中也さんからの不器用なお願いに目を丸くしていると、行くぞといって手を取られる。
左手…シルバーリングが付いてる方の手。
周りの人から私達はいったいどんな風に見えているんだろう。
本当にリングが付いたことによって、どこに行っても変な声掛けは無くなった。
…手、繋いでたら恋人っぽく見えるかな。
恐る恐る軽めに握り返すと、中也さんからよしよしと数回頭を撫でられた。
「ああ!中也さんが中学生の女の子ナンパしてる!」
『!!カルマ君!久しぶり!!会いたかっ……アタッ』
飄々とした声に顔をパアッと輝かせて振り向いて向かおうとすると、頭に軽くチョップされた。
特段痛いわけでもないのだけれど、そこをつい摩ってなんですかと声を漏らす。
「お前、カルマとの再会の喜びはこの前のハグで十分だろぉ?なあ?散々目の前でしてやってくれてたもんなァ?」
『ち、中也さん?』
「俺といんのにカルマごときに『あ、カエデちゃんも!久しぶり!!』って聞けお前は!?」
カエデちゃんも浴衣を着てきていて、久しぶりと返してくれた。
「まあまあ中也さん、あの子は純情な乙女だから」
「うるせえよカルマのくせして……っ、悔しがってねえっつの!!」
よくよく見るとクラスの何人かは集まっている様子だった。
来てないのは寺坂組とか芸術好きコンビとか…まあ、思っていたよりは集まっている。
『あ、中也さん中也さん。先に勝負しないと』
「あ?ああ、そうだな。どれからするよ」
『せーので決めよ。せーのっ』
「『金魚すくい』」
口を揃えて言った言葉に皆キョトンとした。