第11章 縁というもの
『も……だめ、ぇ…入らない…』
「そこまで食ってんじゃねえか、あともうとょっとだろ」
『だ、だっていつも多いのにそれより多くするから…』
「じゃあ全部口移しで食わしてやろうか?」
中也さんの提案にぶんぶんと首を横に振る。
そんなことされてたまるか、絶対にさせない、意地でもさせない。
「じゃあ残すか?」
『そ、れは…っ、ダメ……』
「なんでだよ」
『……中也さんの折角のご飯だもん』
冷静な突っ込みになんとか答えると、中也さんの勢いがパタ、と止まる。
中也さんが作ってくれたものを残すわけにはいかない。
いや、そもそもここにこんなに盛った中也さんのせいなのだけれど、それでも食べきらなきゃいけないというか…残せない。
「…いじめて悪かったよ、お前にはかなりキツかったろ、無理させた」
『え……っ、中也さん!?も、もうちょっと待っててくれたらちゃんと食べるから捨てな…っ!!』
「いいって、俺が食うから。つうかそもそも普段より無理な量食わそうとしてたんだから気にしねえで……ッ!?蝶、お前っ、」
中也さんの意思を無視して無理矢理能力で皿を移動させ、すぐに食べ始める。
途中で中也さんに食べさせるだなんて、そんな事出来るわけがないじゃない。
移動能力くらいなら例えこの様子を見られてたってもうバレてるんだしいいでしょう。
そんな事より、これを食べきらない方が私からしてみたら大問題なんだから。
残っていた量はそこまで多かったわけではなく、なんとか勢いと意地で食べきった。
もう本当に無理だ、これ以上ご飯を食べろと言われてももう絶対に入らない…これだけ食べたの初めてなんじゃないの私。
人からしてみたら一人前くらいの量なのかもしれないけれど。
『……ごちそうさまでした…美味しかったです』
机に突っ伏しながらも、それだけはちゃんと伝えた。
本当に、私の大好きな本家中也さんの味。
美味しかったから無理をしてでも食べようと思うし、貴方が作ってくれたものだから意地でも残さずいただきたい。
私の身体を心配して作ってくれたものなんだもの。
これだけ食べるのが苦手な私に、ここまで真正面から食べさせようとして粘ってくれた人なんて、いなかったんだもの。
少しすると、肩に腕を回して軽く抱きしめられた。
「本当、すげえわ…よく食べきったな、偉いぞ。………ありがとう」