第10章 名前を呼んで
「は…?白石……ってお前…」
『だから、白石 澪ですってば』
「い、いやいやいや、お前それ狙って言ってねえよな!?」
慌てふためく中也さんに、寧ろ私の方こそ狙ってたんじゃないかって思ったくらいですよと返す。
「……苗字、白石…?」
『私の肉親は誰なのか知らないの。だけど私はある科学者に拾われて、結果的にこんな身体になっちゃったけど、命を救われた』
「肉親って…」
『うん、私の生みの親なんて、顔も知らないし多分もうとっくに死んじゃってる。生みの親は、私の大元と同じで普通の人間だったはずだから』
呆然とする中也さんに微笑みかけると、更に頭の中が真っ白になったのか、中也さんがピタリと止まってしまった。
『それで私の親は、結局詳細を辿っていっちゃうと、中也さんと同じで名付けと育ての親なの。実質見た目から名前をとったっていうのもあるらしくって…白石っていうのはね、中也さんとほとんど同じ発想で付けられたんだよ』
「………な、なんだよ…そんな偶然みてえなこと……」
『運命だね?』
中也さんの手が、また優しく動き始める。
こうやって撫でてくれるのも、あの人そっくりだ。
性格は真反対みたいなものなのに、不思議…私の事ばかり考えちゃうのもよく似てる。
でもやっぱり違うのは、この人に対する私の気持ちの方。
どうしようもなく大好きで、どうしようもなく愛おしい。
男の人を好きになるという気持ちを初めて抱いた。
初めて、実感した。
「…敵わねえ……ああ、マジで敵わねえ…っ、やっぱ勝てねえよお前には」
言いながら私に顔を近づけて、ようやっと唇にキスを落とされる。
ここだけは周りの目を気にしていたのか告白をする場面だったからなのか、あれだけ色んなところにキスしておいて、結局してはくれなかったところ。
……結局やっぱりするんじゃない、そんなにキスが好きかなぁ。
『ん……、っぁ………ん、ぅ…ッ』
息が持たなくなった頃に唇を解放されて、またすぐに触れるだけのキスが降ってくる。
私もそれに応えて酔いしれてしまうあたり、相当この人に溺れてる。
『…っ、ひぁ……ッ、中也さ…そこ……っ』
何度も角度を変えてしていると、不意に中也さんの口が右耳に触れ、そこにもキスを落とされた。
「……澪」
そして耳元で突然声を低くして響かされた私の名前に、身体が異様にビクついた