第1章 蝶と白
手慣れた攻撃により、音もなく崩れる水槽。
そして、それにより水槽という名の“檻”から解放される。
私を解放した年の離れた青年に抱きかかえられながら、数日ぶりに水圧から解放された体が、環境の変化に適応しようとする。
『!!……けほっ!!、けほ、っ………』
「…今から手前を連れ去る。悪く思うなよ。」
青年は私の目を見てそう告げた。
此方を見るその瞳は綺麗で、男性にしては少し長めの髪など、今までに見た事のないような外見の男の人…
青年と比べて小さい私の体は、彼の腕にすっぽりとおさまっている。
『貴方は…?』
なんとか声を出して、彼が何者なのかを問いかける。
無言で私を抱えたまま立ち上がり、上着で私の体を隠し、彼は答えた。
「俺は中原。横浜のポートマフィアの、中原中也だ。」