第1章 美恵の妄想
誰もいない静かな自宅の静寂が、外に流れる複数の声たちを引き立てる。そして、美恵の耳に入ってくると、脳内に響き、まるで血液に乗って体中を敏感にする振動のように駆け巡る。
キィ…
不意に、半開きになっている自室のドアが僅かに動く。誰もいないために、半開きのまま着替えていた。
美恵は振り返らずに、頭の中である人物を作り上げて、その人物を自宅の1階の廊下から、ゆっくり歩かせていく。
そして、一歩一歩踏みしめるように階段を上らせる。その人物は、やがて半開きになっている美恵の寝室のドアを見つけ、そっと顔を覗かせる。
中には、ブラウスもスカートも脱ぎ捨て、見られているとは知らずに下着姿を晒している美恵がいる。
「……!!」
その瞬間、窓の外から美恵の待ち望んでいた声が聞こえた。
「彼」の声だった。
ちょうど美恵が駆け足で帰宅し、玄関をくぐってから10分。彼が友達と喋りながら、美恵の自宅を通り過ぎて、声が聞こえなくなるまで3分弱…。
窓の向こうの彼が去っていくと、美恵は下着姿のままベッドに倒れこんだ。
興奮で荒くなった息を枕に吐きながら、先ほど自分の中で作り上げた人物と、先ほど聴こえた「彼」の声を合成する。
そして、覗いていた彼は、ベッドにうつ伏せで倒れこんでいる美恵のすぐ側まで忍び寄ってくる…。
自分の荒い息も、彼の吐く息になって、美恵の耳に入ってくる。
彼の手は華奢な美恵の太ももの裏へ伸ばされる。やわらかい肌に彼の指先がなぞるように流れていき、太ももとお尻の境までやってくる。
今度はおしりの形をなぞって指が動き、少しずつ手のひらでお尻全体を包み込み、ゆっくりで撫で回す。
すると、彼の手は美恵のパンツをずらし、ふとももまで下げて、今一番熱くなっている美恵の性器が晒される。
今までこもっていた熱気が解放され、妙に冷たく感じる。
クチュ… ピチョ…
背中の向こうから聞こえてくる音は、紛れも無く自分のいやらしい想像から分泌された液体の音。
彼は、その指先で割れ目をなぞったり、糸を引く液を伸ばしてりして、にやりと笑みを浮かべている。
彼が見下ろす先には、紅潮した頬と、さっきよりも荒い吐息を吐きながら、腰をよじる恵美がいる。
弱った獲物が逃げ出さないように、彼は美恵の両手を押さえつけ、うつぶせの恵美の上に乗る。