第1章 雪の日
そっと耳に手を当てる。
「何でお前は校舎の中で待つちゅーことができんのやっ!!」
びりびりと全身に響く竜ちゃんの怒号。
乱暴に私の手を取ると自分のマフラーを巻き付けていく。
これじゃ手錠を隠される犯罪者みたいじゃないかとぼんやり考える。
「相変わらず坊はぼたんちゃんに過保護やなぁ」
「まあ坊の過保護は今に始まったことやないですか」
くすくすと笑い声が聞こえてくる。
志摩さんと子猫丸くんが竜ちゃんの肩越しに覗く。
にっこり笑う志摩さんにですね、と笑いかける。
手が温もってきて少し痒くなってくる。
そっとマフラーを外していくと目ざとく見つけた竜ちゃんは自分の鞄から手袋を取り出して押し付けてくる。
「ちゅーか何でわざわざ外で待ってんのや」
ちゃんと手袋をはめろよ?と目で脅されたのでマフラーを返して大人しくブカブカの手袋をつける。