第1章 雪の日
五本指の少しだけ大きな手袋を眺めながら三人と歩き出す。
「雪が降ってるときは空が飛べるから部屋にこもってるのはもったいないやん?」
空に向かって手をかざす。
指の隙間から見えるものは重く曇った空と雪だけ。
三人には私に見えない“悪魔”が見えている。
竜ちゃんは見えなくていいと言うのだけれど。
みんなが見えているものが見えないのはなんだか悔しい。
「空が飛べるって変わった言い回しやなぁぼたんちゃん」
「じっとして空見てたら急に身体が浮いていくんだよ」
「中学生にもなってあんまおかしなことゆうなや」
志摩さんは優しいのに竜ちゃんは呆れたように私を見ている。