第40章 『ただいちどたけ』〜 相葉×二宮〜
今日まで……
自分は世界で二番目に不幸だって思ってた。
一番目は雅紀……
愛の告白の途中で、
相手の『Yes』の返事を聞く前に、
あっという間に死んじゃったんだから……
そんな可哀想な話、そうそうないでしょ?
でも……俺たち今…
少なくとも俺は、世界中で一番幸せだ。
だってそうでしょ?
二度と会えないって思ってた…
会ったとしても、
抱き締めてもらえることなんか、
二度と無いってそう思っていた愛しい人に…
こんなに強く抱き締めてもらってるんだから。
「ニノ…俺、世界で一番幸せだよ…」
俺をすっぽりと包み込んだまま、
愛しい人が、そう囁いた…
俺が今、胸の中で噛みしめた気持ちを、
そっくりそのまま、唇に乗せた雅紀…
嬉しくて……
幸せで…
怖いくらいの幸福感の中で、
俺は声を出して泣いた。
今までの淋しい気持ちも、
あの瞬間の後悔も、
忘れ去ろうとしている世間の冷酷さも、
雅紀を忘れることができない、
諦めの悪い自分も…
全てを融かすように、
雅紀は温かくて、
そして優しい……
「…ま、さ…きぃ…まさ…き…」
雅紀が死んでも泣かない…
涙が出ない俺は、
欠陥人間なんだって思ってた。
実際、それに近い陰口を言われていたことも知ってるし…
誰に何と言われても構わない…
なんなら、
世界中を敵に回しても、
世の中中が俺を非難しても、
それでもいいから、
どうか雅紀を返してほしいと……
何度も願って……
それでも、そんなの叶うはずないって、
諦め、
憤り、
毎日俯いて生きて来た。
そんな俺に、
奇跡が
起きた。
雅紀が……
生きていた時の姿そのまんまで、
俺の元に現れた。
しかも……
あんなことやこんなこと、
してくれてるし…