第40章 『ただいちどたけ』〜 相葉×二宮〜
「なあ、雅紀…出て来いよ…」
「いるんだろ?…姿、見せろよ」
「雅紀…なにもさ、死ぬことないじゃん…」
「あのタイミングって、そりゃ、ないじゃん…」
「………雅紀…」
「聞こえてるんなら、出てきてくれよ…」
「………雅紀~…なあ…」
「………」
「お願いだよ…怒ったりしないから…
俺の前に、姿見せてくれよ…頼むから…」
…………
………
死んだやつに呼びかけるなんて、
初めてのことだった。
今まで、呼ばなくても来るから。
勝手にそこにいるから…
どうやったら、死んだやつが…
会いたい人が自分の目の前に来てくれるのか、
分からなかった。
それでも俺は、
それから、毎日毎日、雅紀が来るのを待った。
仕事中も、
ゲームをしていても、
友だちと飲みに行ってても、
いつもいつも、心の中で祈っていた。
どうか、俺の前に来てくれ、雅紀…
一回でいいんだ…
俺、お前に伝えたかったことが…
伝えようとしていたことが……
雅紀…………
頼むから……
雅紀と過ごした部署を異動になり、
いくつもの季節が過ぎ、
俺を取り巻く環境が、少しずつ変わっても、
俺がどんなにお前に会いたいと願っても、
お前は現れてくれることはなかった。
他の知らないあっちの人は、
相変わらず俺の周りをうろついていたから、
俺の能力が無くなった訳じゃないらしい。
なのに、
一番会いたい人には、
会うことができなかった。
そうして、
俺は、それを願うことを、
祈ることを止めてしまった。
あいつは俺に会いに来たくなんかないんだ。
隣にいたのに、
俺だけ助かってしまったから。
俺も一緒に手を出して子どもを受け止めようとしていたら…もしかしたらあいつは、
雅紀は死ななくても済んだんじゃなかったのか?
だから、あいつは俺を恨んで出てこないんだ。
そう思っていた。