第36章 『夏だ!山に登ろう!』〜大野×二宮〜
そして。
その日はついにやって来た。
やって来て欲しくないと…
台風でも来て、企画そのものが無くなればいいと…
そう願っていた俺の思いとは裏腹に。
雲一つない、絶好の日帰り登山日和……
参加するスタッフも、どこか楽し気に雑談を交わしている。
俺の周りだけが…
俺だけが、どんよりと曇り空…の気分な訳で。
俺の気持ちなんか実はお見通し。
だけど敢えて何も言わなかった翔ちゃんが、
黙って俺の肩を叩いた。
その大きな目を、上目遣いに覗き込むと、
『大丈夫だ、君はやれる男だ』
とでも言うかのように、大きく頷いた。
……『よし、頑張る!』
そう力強く頷き返せないのが歯痒い。
「ニノ~、すっかり山男っていう感じじゃん!」
「まあ~…格好だけはな…」
確かに、俺たちは衣装として用意された登山グッズに身を包み、見た目には完璧な登山スタイル…
どんな山でも登れそうに見える。
「はあぁ~…」
俺はもう一度大きなため息を吐いた。
すると少し離れたところで、松潤と話していた大野さんが、そんな俺に気付いたらしく、つかつかと近付いてきた。
「ニノ…言っただろ~?俺が全面的にバックアップするから!心配しないで行こうぜ!」
「……どうも…」
「今日の天気は快晴です。でも、山の天気は変わりやすいので、十分注意しますが、恐らく大丈夫でしょう。
気を付けて登りましょう!」
ガイドのお兄さんが声高らかに、スタートを宣言した。
「うい~すっ///」
「よろしくお願いしま~す」
「頑張ろうぜい!」
「よし、ニノ、行くぞ!!」
「…おう…」
こうして、1日がかりの登山ロケは始まった。
俺の憂鬱を、リュックに詰め込んで…