第33章 『君が好き scene2』~松本×櫻井~
翔くんが言ってた、『星を観たい』
これをするためにここに来た!と言っても過言じゃない。
「こっちこっち!」
俺が翔くんを連れだしたのは、木立の中にセッティングされた、その名も『空中テント』
木から木に張られたテントの中で、星空を眺めることができるんだ。
外からは狭く見えた空中テントの中は思ったよりも広くて。
ふたりで寝袋に入り身体を寄せ合って寝ころんだ。
「マジかぁ~...」
「すげぇ~...」
...日本に住んでいる、いったい何人の人が、所謂『天の川』というものを見たことがあるだろうか?
そういうものがあることは誰もが知っている。
それがどんなものなのか、どういう風にみえるのか、
それも何となくは知識としては、ある。
だけど...
この世のものとは思えないほど、美しい星空と、本当に星の河と呼ぶに相応しい天空の奇跡を...
自分の目で見た人は、案外少ないんじゃないかな?
言葉を無くす...
息をするのも忘れる...
例えようのない...
そのどの表現もしっくりこない。
それ以上なんだ。
美しという言葉だけじゃ、全然足りない...
俺の愛しの翔くんの美しさも...
若干だけど、こ目の前の『天の川』には、及ばない。
...いや、まあ、いい勝負では、あるけど...
「潤...」
どの位黙ったまま降るような星空に包まれていたんだろうか...
翔くんが俺の名前を呼んだ。
何も言わず隣の翔くんの横顔を見ると、
...翔くんは泣いていた。
正確には、目尻から涙が零れ落ちた。
「...翔くん..」
「今までさ...いろんな感動するもの、観て来た...海外旅行で触れて来た世界遺産の雄大な景色...とか」
翔くんは、空を見たまま、静かに話した。