第32章 『小人のくつや』~大野×二宮~
「ああ...この皮を使ってしまったら、もう何も無くなってしまう...材料を買うお金もないし...」
もう直ぐ冬が来るっていうのに、
俺はどうしてこんなに貧乏なままなんだろう...
「お腹が空いたな~...焼きたてのふわふわパンが食べたい...
シナモンロールがいいなんて、贅沢は言わないから...チョココロネでいいから...食べたいな~」
考えていても腹は膨れないし...
起きていてもすることもないから、寝ようかな~
明日は、この最後の皮で、最後の靴を作ろう。
心を込めて、最高の靴を作ろう...
俺は、電気を消して布団に入った。
寒いし、腹が減ってるし、で、眠れないと思っていたけど、いつの間にか眠ってしまったらしい...
...不思議な夢を見た。
小さな裸の小人が靴を作っている夢だった。
大きな木づちで、一生懸命に作る小人は、
女の子なのか男の子なのか分からないくらいに、
とっても可愛い顔をしていた...
朝...小鳥のさえずりで目が覚めた。
布団から起きて着替えようとして、ふと作業台の上を見ると...おや~??
見たこともない素敵な靴が一足、揃えて置いてあった。
「あれっ?この靴...どうしたんだろう?」
その靴は、昨日俺が用意した皮で作ったらしかったけど、それは見たこともない様なデザインで、本当に素敵な靴だった。
...いったい、誰が作ったんだろう~?
奇妙に思いはしたが、俺は、早速店のショーケースにその靴を並べてみた。
すると...
上品な紳士が、慌てて入ってきた。