第31章 『そうだ!銭湯へ行こう!』~松本×二宮~
潤くんが連れてきてくれたのは、都内を抜け、海岸沿いを走った先にある、高台の公園。
眼下に広がる暮れゆく街並みと、河口から海に広がるゆったりとした海が見えた。
...ああ、何て気持ちいんだろう...
「かず...都市計画のこと、黙っててごめんね...」
徐に潤くんがそう言った。
「ごめんなんて、そんなこと..お礼を言うのは俺の方だよ」
「いや、でもホントにさ...二転三転して、上手くいくか分からなくなっていたりして。ぬか喜びさせてもいけないって。それで言えないまま...」
「潤くん...」
「かずの喜ぶ顔を早く観たくて、ほんとは早く言いたくてウズウズしてたんだよ...」
俺は素早く辺りを見廻してみた。
幸い周囲には誰もいない。
「潤くん!」
俺は彼の胸に飛び込んだ。
「わあぁっ///」
不意を突かれた潤くんはよろけたけど、ちゃんと俺のこと、受け止めてくれた。
「かず...誰かが来たら...」
「いいの!だって、こうしたいんだもん...潤くん、もっとぎゅって、してよ❤」
潤くんは何も言わないで、俺をすっぽりと包み込んで、背中に回した手に力を入れてくれた。
密着する身体の、分け合う体温が温っかい...
「潤くん...ホントにありがと。潤くんがそんなに『二之宮乃湯』のこと、考えてくれてたなんて...俺、凄い嬉しかったんだ...」
「うん...」
「でもね、もうお終いなんだって...あと何日、って、そう思って自分の中で気持ちをそこに持って行こうって、頑張ってたんだ...」
「それは、ごめん...」
俺は何度も首を振った。
だってさ。
こんな嬉しい結末何て、誰が想像できた~?
新しくなる『二之宮乃湯』
でも新しいけど、今までの古さと歴史を残してくれる。
夢のようなことで。
何て言って感謝していいのか分からないよ...