第31章 『そうだ!銭湯へ行こう!』~松本×二宮~
「私は、資料の3頁以降にあります通り、A地区に大正浪漫ストリートを提案いたします。
同地区には、銭湯、駄菓子屋、和菓子店、など、この土地で何十年も昔から地域に根付いた商売をされ、
住民の方に愛されて来た...そんな店舗が多く存在します。
それらの店舗の経営者の方々にも、本都市計画において同意をしていただきましたが、外国人観光客も訪れるであろう下町のこの商業地区に、
日本古来のこのような店舗を、今風に展開し、
現経営者の皆様に、新しくご出店していただき、古き良き時代の日本を再現した街創りをご提案します...
これはですね、具体的には...」
潤くんの話はまだ続いていたが、俺は一気に頭が真っ白になって、もう、何の音も入って来なかった。
...新しく出店?
都市計画の街に...?
それって....??
二之宮乃湯が残るってこと?
「和也...松本さんは、いったい何を言ってるんだよ?」
小声で父ちゃんが俺に耳打ちしたけど、
応えることなんかできなかった。
ただステージに立つ潤くんが、凄く遠い存在のように思えて、何だか悲しくなっていたんだ。
『二之宮乃湯』を続けることができるんだという、夢のような話に、舞い上がってもいいはずなのに。
ステージで光を浴びて堂々と話す潤くん...
俺とは釣り合わないよな...やっぱり。
そんな気がして...嬉しい事なのに...
なぜだか悲しくなって、泣きそうだった。
その夜は、帰りが遅くなるということで、潤くんには会えなかった。
『ありがとう』って。
そうお礼のラインを送っておきたいと、何度もスマホを出したけど、どうしても打てないまま止めてしまった。
潤くん...
潤くんに会いたいよ...