第31章 『そうだ!銭湯へ行こう!』~松本×二宮~
言われたとおりに、潤くんからもらった封筒の場所に、父ちゃんと一緒に行った。
イベントホールにはたくさんの人が集まり始めていて。
「和也、何が始まるんだ~?」
「俺だって分かんね~って...」
キョロキョロする俺たちは、何だか明らかに場違いな感じで。
「おお、二宮の~」
声を掛けて来たのは商店街の花田のおじちゃん。
老舗の饅頭屋さんをやっている...
正確には、やっていた...
家と同じで、店を閉めることになったんだ。
花田さんも呼ばれたってことは...?
「かず~!」
「潤くん!!」
潤くんが小走りに近付いてきた。
「今日はありがとうございます。今から、プレゼンがあるから、見ててね...俺が..」
「ちょっと~、松本!」
「じゃ、後で!」
忙しそうに潤くんは行ってしまった。
結局俺たちは、訳が分からない。
俺達3人は、もうどうしていいのか分からないままに、周囲から明らかに浮いていた。
その時...
場内のライトが落ち、ステージ上に何人かのスーツの人たちがやって来て、その中に潤くんの姿を見つけ、俺は心臓が跳ねた。
やっぱり、ダントツでカッコいい。
潤くんの雄姿に見惚れていたその時、司会の人にスポットが当たった。
『これより、〇△地区都市計画のマスタープランについてのプレゼンテーションを行います』
それって...家の...
色んな偉そうな人がする挨拶を、俺は夢の中で聞く様な、そんな気持ちで聞いていて...内容が頭に入って来なかった。その時。
『では、大正浪漫ストリートについて。企画リーダーの松本より』
司会の人に呼ばれて、ステージ中央に出て来たのは、他ならぬ、潤くんだった。
潤くんは、ステージの上から俺を見つけて、少しだけ笑ってくれた。
俺はただ、これから彼が何を話すのか...
聞き慣れたその声だけを待っていた。