第29章 Happiness~櫻井×二宮~
俺は笑った。
......笑いながら、泣いた。
愛する人を胸に抱いて...
あああ///こんなことが本当にあるなんて!
いったい誰が想像できた?
...かず...かず......かず...
宝くじが当たって泣くって...
どうなのかと思ったのは、後になってからだ。
当選金は税金を引かれたけど、
かずがもう返した金額が1000万を超えていたので、十分だった。
「手放すのは残念だけど。和也、いい人に巡り会えて良かったな。」
かずと一緒に挨拶に行った山口さんは、
俺が思っているよりも、ずっといい人だった。
何よりも、こんなに格好いい人だったと知って、正直嫉妬した。
だって、かずにこっちの世界を教えた人だから。
なんか、もっとこう、見るからに極悪非道の悪人面で、美しい青年たちを侍らしているような...
「櫻井くん」
「えっ?あ、はい...」
↑悪意ある想像を、申し訳なく思っているらしい...
「和也のことを頼むよ。」
山口さんとがっちり握手を交わし、俺達は山口さんの事務所を後にした。
「山口さん、いい人だったね...」
「うん...俺が18の時からお世話になってたから...」
事務所を何度も振り返るかずは、心なしか少しだけ、淋しそうにも見えた。
「かず...山口さんの事...」
かずは俺の質問に少し首を傾げて目を見開いた。
そして、にっこり笑って俺の頬にキスをした。
えっ!?...いや、えっと...?
キョロキョロ周りを見回す俺に、かずは笑って言った。
「山口さんは、俺の親父みたいな存在だったんだ...両親がいない俺に、良くしてくれたよ...
仕事のことも。高校も満足に出ていない俺が、大金を稼ぐなんて難しいからね...
何年も俺のことを拘束しておきたくないから...早く自由にしてやりたいから...って。」
...だから、あんな仕事を...
俺には、山口さんの気持ちは分からない。
でも...