第29章 Happiness~櫻井×二宮~
「...翔さん...」
かずは唇をぎゅっと結んで俺を見つめていた。
「かず...」
息が上がって苦しい...上手く酸素が入って来ない。
でも。
そんなこと言ってらんないよ///
改札を急いで抜け、俺はかずに走り寄ってその身体を抱き締めた。
「かず...かず..かず...」
息が切れて、次の言葉が上手く出ない...
それでも俺は、何としても、この思いを届けたくて、華奢なかずの身体をきつく抱き締めた。
俺の肩に顔を埋め、かずが嗚咽を漏らした...
...ごめん...ごめんよ...
そう心で繰り返しながら、何度もかずの頭を撫でた。
駅で抱き合うゲイカップルを、乗客は遠巻きに近寄らないように通り過ぎてく...
中には、『キャッ~❤』なんて盛り上がりながら見ていくOLの二人連れなんかもいて...
普通の俺なら、あり得ないけど。
今の俺は、そんなのどうでもよかったんだ。
周りになんて思われてもいい...
変態だって、そう思われても構わない///
誰に何て言われても、かずを離すなんてできない///
息が整ってっ来た俺は、ゆっくりとかずを離して、その顔を覗き込んだ。
涙でぐちゃぐちゃの彼は、恥ずかしそうに俯いた。
その可愛い仕草が、俺の心臓を鷲掴みにした。
「俺のマンションに行こう...」
やっとそう言うと、かずはコクリと頷いた。
電車の中。
俺の腕に捕まらせた。
かずは始め戸惑った顔をしたけど、逆らうことはしないで、わざと酔った振りで、俺に凭れて目を閉じた。
......もう。
かずを誰にも触れさせたくない///
俺だけのかずにしたい...
それには、どうしたら...??
俺は電車に揺られながら、
ずっとそのことだけを考えていた。