第29章 Happiness~櫻井×二宮~
レストラン内で揉めている男同士のカップルは、否応でも目立つ。
そっと近付いてきたギャルソンが、
「あの、他のお客様もいらっしゃいますので、お声の方を、少し...」
小声でそう言ったが、俺の耳にはほとんど届かなかった。
......かずを傷つけた...
俺は、なんてひどいことを言ってしまったんだ///
楽しかったはずのデートが、俺のつまらない嫉妬で台無しになってしまった。
この後、楽しい二人の夜だった...のに。
.........
俺は弾かれたように席を立った。
ジャケットを羽織る俺に、
「あの、デザートを...」
驚いたギャルソンがそう言った。
「急用を思い出したので...すみません..」
俺はかずの後を追って、店を飛び出した。
......どこにいるの?
かず...今どこに...
どこで泣いてる!?
携帯を取り出し、走りながらかずに電話をした。
...呼び出し音だけが、無情に連なっていく...
かず...
かず、お願い!出て!!
かず......
「...はい」
「かず!!今どこにいるの?」
「......」
「お願いかず、会いたい!今すぐに...」
「......」
「かず///」
「駅のホーム..」
「今すぐ行くから、絶対いて!待っててよ!!」
俺は電話を切って、全速で駅へと走った。
今、かずを抱き締めてやらなきゃ///
俺はきっと、永遠に彼を失ってしまう!
そんなの...それだけは嫌だ///
だって...
だって俺はもう、かず以外には、愛せないんだ...きっと。
今回のことで、自分の気持ちがはっきり分かった。
かずが好きで...
もう、他の人じゃダメなんだ、俺。
必死に走って俺は駅の改札に着いた。
その向こうに、一人佇むかずが、俺を待っていてくれた。