第29章 Happiness~櫻井×二宮~
変に饒舌過ぎたかな~?
松潤が訝し気に俺を見つめている...
バレたか?
「ふ~ん...そうか..」
俺の心の中までも見透かすような強い視線を感じながら、俺は白々しく背伸びをした。
「まあ、お前には悪いけど、俺はやっぱ女がいいかな~?男はもう無理だわ...」
窓から外の天気を気にする振りして、
松潤の方を見ずにそう言った。
「そっか...まあさ。そんなに良かったんなら、罰ゲームになんないしな~、一応、そう言う世界も体験したってことで、世界が広がったってことにしてくれよ...」
にっこりする彼に視線を戻した俺は、
「ソッチはもうお腹いっぱいだよ...」
と肩を竦めて見せた。
松潤にはそう言ったけど、その後も、俺はかずを指名し続け、いつしか、俺達はマッサージする方と、されるという関係以上の仲になっていった。
『翔さん、今夜は泊まっても大丈夫ですか?』
「勿論。明日は休みだし、ゆっくりしてってよ」
『嬉しい。俺、夕飯作ります』
「いいって。外で旨いものでも食べようよ」
そんな甘ったるいLINEでのやり取りも普通になっていた。
俺に会わない日に、かずが他の客と会っていることさえ、うっかり忘れるほどに...
かずと会える幸せに...
ひとつになれる喜びに、俺はもう、かずの恋人気取りだった...
その日、予約して二人でフレンチのレストランに出掛けた。
楽しく食事をし、ワインも進んで、いい加減に酔ってきたその時...
「あれ~?かずなりくんじゃない?」
テーブルの横を通りかかった中年の男がかずに声を掛けた。
「あ、東山さん...」
一瞬、かずの目が泳いだのを俺は見逃さなかった。
「ご無沙汰してます...」
営業用の笑顔を向けるかずに、俺の心臓はぎゅっと苦しくなった。