第29章 Happiness~櫻井×二宮~
「やぁ///」
不意の攻撃に、かずはバランスを崩して俺の腹に手を付いた。
「...翔...さん」
「かず。こっからは俺が...」
かずの腕を引いて、俺は彼の身体を組み敷いた。
「翔さん...」
かずの瞳の色が、さっきとは真逆の弱者のそれに変わったのを、俺は見逃さなかった。
色んな表情を魅せる彼に、俺はもう夢中だった。
細い腰を抱え上げ、最奥目指して何度も穿つと、繋がっているソコはくちゅくちゅと女みたいな音がした。
さっき出したかずのは、また緩く勃ち上がり始めていた。
俺はソレを手のひらで包み、優しく上下に扱いた。
「あああっ、翔さん...もっと...」
......もう夢中だった。
かずとの行為に...
かずに...
夢中で...ただただもう、かずに溺れていく...
自分が自分でなくなってく...
そんな感覚が、驚きで、
そして......幸せだった。
汗だくになりながら縺れあい、俺はかずの中で果てた。
「...翔さん...」
息が整わないかずは、目を閉じたまま肩を上下させている。
彼の中で、俺のはまだ衰えずにそこに居る。
でも...
流石にそれは、ダメだろう...
ゆっくりとかずから出ると、
「どうして...?そのまま、イケそうだったのに?」
そんな健気なこと言ってくれるから、
もう堪らなく愛しくて、俺はそっとその汗ばんだ身体を抱き寄せた。
「いいんだよ...だって、初めてなのに、そんなの...」
そう笑った俺の顔を、かずは驚いたように見つめてから、
「翔さんみたいなお客さん...初めて...」
と言った。
その顔は、何となく淋しそうで、儚げだった。
「...かず...」
思わず名前を呼ぶと、彼は俺に視線を戻した。
その目にはうっすら涙が浮かんでいた。