第4章 『Crime and Punishment』 ~?×?~
人間、死ぬより辛いことってあるんだ...
それが、俺に与えられた罰...
潤の気持ちを利用し、
雅紀の思いを引き裂いて、
己のことだけ考えた傲慢さが、
やがて自らに重い重い足枷となって戻ってきた。
苦しみから、逃れる術さえ持っていない俺は、
ただ、その事実を受け入れるしかない...
愛し合う二人を、側で見ているしかできないんだ。
胸を掻き毟られるような痛みに、
涙が零れることがあっても、
誰にも気付いてもらえず、
たった一人、いつ終わるとも知らない無間地獄に、耐えるしかないんだ...
それが、罪を重ねてきた俺への、
重い、罰...
そして。
運命のその日は、やってきた。
その朝は、いつもと違っていた。
例の看護師が、
俺を弄んでいるときも、
もしかしたら、手で払いのけれるんじゃないかって、そんな気がして、指先に力を込めてみたけど、
やっぱりそれは難しくて……
でも、彼の手に高められて、
不本意ながらも射精するその瞬間、
俺は僅かに背中を反らせ、
快楽に顔を歪ませた…
でも、看護師はそのことに気付かない……
「櫻井さん……気持ちよかったでしょ?
明日は休みだから、また明後日ね……じゃあね~」
彼が去っていった病室は、
規則正しく落ちる点滴と、
心臓につけられたモニターの波形以外、
動くものはない……
廊下からは、
慌ただしい音が聞こえてくるけど、
部屋の中は別世界のように静寂で。
いつもと変わらない朝………
でも、
今朝は、ほんの少しだけ、違っていたんだ……
………目を……
瞼を押し上げることが……
あと少しで、
もう少しでできそうでな……
奇跡が、
あと数時間後に起きること……
このときの俺は、
まだ知らなかった。