第4章 『Crime and Punishment』 ~?×?~
一瞬だった。
隣に並んで信号待ちしていた潤が、
子どもの帽子を追って、
赤信号の車道に飛び出したこと...
もう直ぐそこまで、
大型トラックが迫ってきていたのに...
無意識だった...
潤を愛しているから、とか、
守りたいから、とか、
そんな気持ちが俺にあったのかどうか、そんなのは、分からない。
ただ、身体が勝手に動き出していて、気が付いたら、潤を突き飛ばしていた。
時間にしたら、1秒にも満たない、
ほんの一瞬の時間...
トラックに跳ねられて、空を舞う中で、
俺の頭の中には、いろんな景色が映っていた。
雅紀の笑い声...
俺を見る悪戯っぽい目...
ふざけて絡み合った子どもの頃...
潤の拗ねた顔....
屈託のない眩しい笑顔...
『愛してる』と何度も繰り返す潤の声...
雅紀...潤...
.........ごめん..
俺の罪は、もう終わりにしなきゃいけない...
だから、神様が俺に罰を与えた...
俺は、死ぬんだ...
罪を償うために...
ほんとはもっと早く、
こうしなきゃいけなかったんだ...
ごめんね...
俺を許して...
潤...
雅紀.....
俺の身体は、風になった。
大きく跳ね飛ばされて、
車道に叩き付けられた俺に、
たくさんの人が集まってきた。
口々に、騒いでいる...
その様子を、
座ったまま、潤が見ている...
近付いて来ることも出来ず、
瞬きもしないで、
震えながら見ている...
『いいんだよ...潤...これでよかったんだ...
潤が助かって...よかった...』
遠くに、
救急車のサイレンを聴きながら、
俺の意識は、遠退いた...