第25章 『シノビノニノ』~大野×二宮~
だからこそ。
このオンエアは衝撃だったんだ。
勿論、今までも、俺の危惧していることは智も一応は知っていて、
『今更、そんなことある訳ないじゃん!」
そう笑っていた。
『俺の心はもう、かずのものなんだからね』と...
かずのもの......
それは、翔ちゃんが智を相手にしない、っていう事実の上に成り立ってるんだよ?
智はそれをちっともわかってない...
もしも...
今、10年以上知らん顔して、気付かないふりしてた、本気じゃないって笑ってた、あの翔ちゃんが、
智を好きだって言ったら...
『やっぱり俺には、智くんしかいないわ』
何て言っちゃったら?
智...あんた絶対そっち行くでしょ??
俺に、泣きながら『ごめんかず...』って...
結局そっち行くよね?
......そんなネガティブ全開な妄想が、俺の中にいつもあって...
テレビの前...
智の手を握ったまま、石の様になってる俺に、
「...かず...冷やし中華、食べちゃお?」
智が、様子を伺うように言った。
いつも不安だよ...
側にいたって。
抱き合ってたって。
『あいしてる』なんて言ってもらったって...
いつかは、この人、俺から...って。
「...さとし...」
恐る恐る彼の顔を見ると、智はにっこり笑っていた。
俺の大好きな...
10年以上、ずっと見つめてきた、智の笑顔...
その頬に、そっと手を伸ばすと、智は、急に俺の指をパクッと咥えた。
「さと...」
「かず。何て顔してるんだよ?
俺はね...かずが好きだよ?いつも俺のこと大好きで、大好きだからいっぱいやきもち妬いて、んで、その後いっぱい可愛がってくれる...
そんなかずが、大好きなの!!」
「....智..俺...」