第25章 『シノビノニノ』~大野×二宮~
【 ニノside 】
本番ではさらっと流した、大野さんの手にタコが落ちてくる場面。
隣の俺と松潤は、『気持ち悪い』っていう演技をしなければいけない訳で...
そんな中。
手で活きたタコ受け止めた智は、目線で、真っ先に翔ちゃんに助けを求めたんだ。
その目は『助けて翔ちゃん!』と言っている...
誰が見てもそう見えてしまう。
そして、その視線を受け留めた翔ちゃんは、腕組みをして、じっと智を見つめてる。
『そうかそうか、落ちてきちゃったのか...頑張れ智くん!!』という顔...
......なんだ、これ...??
公衆の面前で、見つめ合う夫婦みたいなふたり...
そこはもう、ふたりの世界...
翔ちゃんは勿論助ける訳でもないし、
智も言葉で何か言うこともない...
だから尚更...
ふたりが目で会話しているその様に、俺は愕然とした。
俺のただならぬ気配に、隣の智は危険を察知したらしく、リモコンに手を伸ばした。
消そうとでもいうのか?
俺は、その手をぎゅっと掴んだ。
「...あの...かず..」
不安げに震える智の声...
俺は、彼の視線を感じながら、決してそっちを見ない。
......番組は、その後も、何もなかったかのように進んでいく。
当たり前だ。
事実、何もないんだから...
でも......
この人が、こんな顔してたなんて。
智が、恐怖におびえたその瞬間、
こんな目をして、翔ちゃんのこと見てたなんて///
智の手を掴んだ俺の手は、微かに震えてる。
ゴクリッ、と俺の唾をのむ音が聞こえた。
......智も最早、何も言ってこない。
俺の言葉を待ってるんだ。
どうして、たったこれだけのことに、俺がこんなに反応してるかって??
答えは一つだ。
大野智は、何年間もずっと、
櫻井翔が好きだったからだ...